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【萌え】みんなで作るRagnarok萌え小説スレ 第14巻【燃え】

[20:ブルー&ジェット2/4(2007/11/27(火) 23:41:21 ID:OlhyQDOY)]
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「騎士団最速の男に、何をしようって言うんだ」
 本当に只中に居れば、だが。
「あれ、血とか肉とかぜんぜん出てなくね?」
「だれか中の方に頭ある奴いるかー?」
「真っ暗でなんもみえねーっつの」
「あっ、居た居た。上に乗っかってるよ!」
 言葉通りサングラスの騎士は塊となった骨達の上に立っていた。傷一つもなく健在で、今度は時
間を掛けてゆっくりと抜刀していく。
「転空神剣、白骨斬り」
 言うが速いか大太刀が振るわれ、大骨塊を縦に切り裂き一網打尽に吹き飛ばす。だがしかし、今
度は全ての骨が崩れ去るわけではなく、無傷であったものが再び人の形を取り戻して立ち上がる。
 その数五体。再び騎士の周囲を取り囲むが、騎士の口元にはにっと笑みが浮かぶ。周囲を睥睨し、
連ねる言葉にはやはり強い自信が伴った。
「さて、どなたから刀のサビになってもらおうか!」
 こんな言葉を聴かされれば、誰だって頭に血が上る。それがたとえ血も涙もない骨であっても。
五体の躯は激昂し、奇声を上げて中心の獲物へと飛び駆る。
 そこからはもう、流れる華麗な太刀振る舞いの始まりだ。
 最初に飛び掛った一体目を抜刀からの逆袈裟で切り払い、返す刀の振り下ろしで二体目を斬る。
技後直後の隙を狙った三体目は、その繰り出した刃に合わせて切っ先を突き出し頭蓋を貫き後の先
を取る。四体目にはなんと己が愛刀を投げつけて、旋回する刃で胴と首とを泣き別れにして見せた。
 あっと言う間に片付けられた雑魚たちは、一斉に断末魔の叫びを残して霧散する。
「ド、ドドドドドレイク様ぁ!」
「お前ら呪ってやる、呪って……ぎゃぁぁぁっ!」
「また出るからなぁ! 忘れんなよ!!」
「覚えとけよ! えっ! 忘れるって!?」
 しかし、手元が狂ったのか投げた刃は放ち手には戻らず、旋回するも大きく上空へと上って行っ
てしまった。
「はっはぁ!! 丸腰になりやがったぜこのばぁぁぁっかが!!!」
 それを絶好の好機と取って、最後の一体が無手の騎士へと迫る。迫られる側はあくまでも平然、
他の武器を取り出すでもなく両手を組んで待ち受ける。
 そしていよいよ白刃が獲物へと届く。深々と根元まで突き立って骨を断ち、頭頂から股間まで一
直線に刺し貫きその身体を縫いとめてしまった。
 ――上空より木の葉の様に飛来した一振りの太刀によって。
「転空神剣、虎乃刃落とし」
「こ、これが奴の本気かよ!? 本気出すなよ!」
 空高く迷走したと思われた放たれた刃は、持ち手へと迫る敵を追い越して上空で回転を止め、見
計らったように刃を下に向けて落下してきたのだ。
 縫い止められた躯ごと大太刀を引き抜いて、一閃絡まった骨を振り払う。刃より抜けた躯は最早
言葉も無く、ただガラガラと崩れて道端へとぶちまけられた。
 そうしてから視線を差し向けるのは、当然今も煙を楽しむ海賊王。不埒な態度に刃を突きつけ、
ぎらりとサングラスが陽光を弾いた。諸悪の根源ここに見たり、一切容赦するつもりもなく真っ向
から剣気を叩きつける。
 殺意にも似た気迫を叩きつけられた側は、涼しげに受け流してくつくつ肩を震わせて笑っていた。
そして、久しぶりに宝物の地図でも見つけたように嬉しげに語る。
「久しぶりに表に出てみれば、割と使える人間が居るじゃあねぇか。こいつぁ、こっちもエースを
切らないといけねぇやな」
 無手を掲げ挙げてぱちりと指を鳴らす。すると、死体の山に座る船長の背後から、すーっと二組
の影が現れて騎士との間に立ち塞がった。
 片や擦り切れたぼろの着物を身に纏い、腰には無骨な太刀をぶら提げる。身体はやはり白骨で、
肩で風切る剣客風情も諸々に、立ち居振る舞いこれ浪人であると体現する。異国情緒を振りまくそ
の者こそは、上級悪魔に名を連ねる彷徨う者であった。
 もう一方は何処から見ても寒天饅頭、夏に涼しげ半透明。底冷えするよな瘴気を纏い、恨みがま
しい表情でふよふよ空飛ぶ幽霊ポリンのゴーストリングであった。その饅頭が、ごぼごぼと水の中
で喋る様な不鮮明な声で己が主に声を掛ける。
「お呼びにより参上いたしました。あやつめの始末お任せください」
「それがしも久々の強者との相対に胸が震える……。はたして水饅頭殿に倒せる相手かな?」
「ごぼっ、馬鹿にするのか!? っていうか水饅頭って言うな!」
「何、心配しているだけよ。水饅頭愛らしくてよいではないか。ああ、ほれ、あまり先方を待たせ
るものではないぞ」
 水饅頭の言葉に躯の侍も便乗し、やいのやいのと問答が広がる。流石に長く続けるのは非礼に過
ぎるかと浪人が気付き、意識を騎士へと戻させたがなんともノリが軽い。
 待たされるほうは不機嫌そうに、踵を付けたままで脚をタシタシと鳴らしていた。ちなみに、こ
の仕草は不機嫌なウサギが良くやるらしい。
「待たせたなグラサン用心棒。貴様の相手はこのゴーストリング様がじきじきにしてくれよう」
 散々待たせて踏ん反り返るは水饅頭。何処から見ても顔だけだが心持ち上向きで、胸を張って宣
言している。狂おしいほどの雑魚キャラっぽい容姿だが、これでもなかなか倒せないBOSSとし
て有名なのだ。良く逃げるから。
 そんな思いが視線に表れていたのか、無言だった騎士に饅頭がぷりぷりと怒り出す。
「貴様! 貴様もワシの実力に疑いを持っているな! ならばとくと見せてやろう、このワシの華
麗な妖術を」
 ごぼごぼと水の底から語り掛ける様に呪文が紡がれ、ボウッと灯火が点く様に水饅頭の周囲に人
魂が現れる。青白く灯る炎の揺らめきが五つ、ぐるぐると水饅頭の周囲を回る。魂の回転は次第に
速まって行き、残像が繋がり一つとなって円を描く。太古の英霊を呼び出し弾丸と成す魔の技法。
「ソウルストライクだ!」
 回転の中から我先にと弾丸が獲物へと飛び出した。白い弾丸と貸した魂魄は、流星さながらに尾
を引きながら相対する騎士へと向かう。
 狙われたほうは堪ったものではない。飛び掛る無数の弾丸に横っ飛び一発、辛うじてかわして地
面を転がる。片手を突きながら立ち上がると、一直線に水饅頭へと駆け出した。
 無論迎撃にも人魂が飛ばされる。石畳を砕きながら騎士の駆け抜ける軌跡を作る。偉大だったり
邪悪だったりする魂が盛大に無駄遣いされていく。きっと英霊涙目。
「おのれ、ちょこまかとしおって……。ならばこう言うのはどうかな」
 ベールを被った水饅頭の内側からぱらぱらと、小さな布切れが幾つか落ちた。その布切れは地面
にぺたりと張り付くと、その中央が餅の様に膨らみ始め終いには水饅頭よりも大きくなってしまう。
すっかり大きく膨らんだ布切れには、恨めしげな簡素な穴の表情が張り付いていた。ウィスパー―
―ここまで大きな個体は巨大ウィスパーと呼ばれるシーツを被った幽霊の一種だ。
「サモンスレイブ。さあ船幽霊どもよそやつの足を止めるのだ!」
 わらわらとシーツの膨らみ達が騎士に群がる。そのシーツが更に内側から横枝の様に膨らんで、
追い縋る騎士にむけて振りぬいた。フワフワとした見た目に反してその威力はそれなりに高く、身
をかわした騎士の代わりに槍を幾つも立てかけていた露店がばらばらに吹き飛ばされた。
 撒き散らされた槍を避けながら、追い立てられるばかりでは芸がないと刀を振るう。その斬撃は
鋭く速いが、その交々が幽霊達を傷つける事無くすり抜けた。
「馬鹿目が! 我々亡霊は思念体、物理攻撃など効きはせんわ」
 そんな事は百も承知だ。刀を振りぬいた反動を利用して身体を回し、シーツの群れの只中を連続
してすり抜けていく。
 出来る事は逃げるだけ。この世界では属性の無い刀ではこの敵達は断ち斬れない。だが、この世
界には幽霊を傷つける方法がある。それは――
「ジェェーーーーット!!!」
 腹の底から力を入れて、騎士が猛々しく叫ぶ。無論呼ぶのは、己が半身とも言える怪鳥ジェット。
その名の如く飛ぶ様に地を駆けて、地平の果てから土煙を上げ現れる。
 現れ駆け抜ける相棒に、すれ違い様に手綱を掴んで引っかかり、一緒になって飛んでいく。乗る
と言うよりは引きずられる。地面と平行に身体が靡いていた。
 加速の勢いを殺さぬままに、一つになった相棒達は曲線を描いて赤い道を振り返る。靡いていた
騎士は遠心力で勢い良く壁に向かい、両足で壁に垂直に着地、反動を利用して飛び、相棒の背にま
たがった。
 嘶く様に鳴き声を上げて怪鳥が走る。その背の相棒は手綱を引いたまま身を屈めて、片手を地面
すれすれまでに差し伸ばす。そうして、打ち壊された露店から散乱した槍の一つを見定めてから拾
い上げる。


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