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【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】

[340:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2009/12/28(月) 01:59:07 ID:0LL7FRuY)]
(――ちっ・・・)

ウィザードはその場から飛び退いて距離をとる。
避けるにはもの足りない距離に舌打ちをひとつ吐き捨て、
せめてものダメージ軽減に展開したEQ任せに身を固めて防御姿勢をとった。

・・・・。

だが、数分とも思える数秒の後も、その斧が振り下ろされることはなかった。
オークの巨影は、斧を振り上げた姿のまま、まるで石像のように静止していた。

「グ・・・ガガガっ・」
その石像が小刻みに震えながら、消え入りそうな声で言葉にならない声を上げていた。
その腹から手が生え、そこから伸びた、細くたおやかな指に血が滴っていた。
その指が腹に収まるように体のほうへ引き込まれてゆくと、オークはゆっくりと倒れ、
その崩落に巻き上げられた埃の先に、小さな女性の影が現れた。

「ふむ・・・・まだ研究途中の余地はありますが、この属性変換、使えますわね・・・」
オークの腹を貫いたその手を見定めながら、セージが何かを確認しながらつぶやいた。
返り血を振り払うように手を払うと、飛び散る血は炎を帯びて蒸発した。

「油断ですわよ、あなたらしくもない―。」向き直してセージが声をかけた。

――ぞくり。

ウィザードの背に刹那、寒気が走った。
この混乱の中、涼しげなセージの横顔が、よく見知ったそれとは違って見えた。
本能的な恐怖が、ウィザードの心を一瞬にして凍てつかせた。

「―?――大丈夫ですの? 」
呆然と立ちすくむウィーザードに気付いたセージが声をかける。
心配そうに覗き込むセージの目は、いつもとかわらない蒼天のような色を映し、
その晴れやかな目に、ただ不安げなウィザードの姿が写っていた。

「―あ、ああ、うん、大丈夫、ごめん」
いつものセージを思い起こし、ウィザードはその杞憂を飲み込む。
戦闘に混乱したのかと自分を納得させると、落ち着いて現状に向きなおした。

「――――なにが原因で起きたのか。
 ・・・は、知りませんが、とりあえず現場の混乱は収まりつつあるようですわね。」
察しのいいセージがウィザードの心を読んだかのように言った。

あたりは、一応の収束が見受けられ、転がる人やオーク達の死屍累々のもと、
傷つきうずくまる者達を残して、くすぶるような辺りの状況がそれを物語っていた。
わずかに、だだっ広いエリアの一部で、まだ戦闘行為が散発的に継続されていた。

「――ん、でも完全にこれを終わらせて、作戦に戻らないと・・・。
私はほかの戦闘に加勢してくる・・・。――あなたは怪我人の対応のほうを・・・」

周りを見渡しながら、ウィザードが言う。
作戦の継続は、地下深く、外の様子も分からないこの場からでは分かりえなかったが、
ウィザードは後対応に備えるべく、揺り動かされた状況を元の状態へ戻そうと考えた。
体に疲弊は多少あったが、なぜか体の底のほうからジンワリと力が沸き上がり、それをカバーしていた。

「―――――どこへ、・・・・行きますの????」
再び、動き始めたウィザードの背後から、それを止めるかのようにセージが声をかけた。その背後にセージから発する魔力の収束、高まりを感じながら、ウィザードが振り返る。


ウィザードは見落としていた。

傷つき倒れた臥すその者たちが、

今持って散発的にエリアで行われている戦闘行為が、

かならずしも、オークと人間が相対するものだけではなかったことを―。

「―私と・・・・・戦ってはもらえませんこと・・・・・?」
先ほど感じた恐怖が、セージという人物の現身をなして、そこに居た。

<続く>


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