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【憎悪と狂気】バトルROワイアル 十冊目【恐怖と絶望】

66 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/15(火) 00:39:03 ID:0MPcZNjg
267. 2つの地下で(三日目午前)


その異常は即座にGM森へ報告された。
ジョーカーでも橘でもなかったのは単に当番の問題である。

「あ?誰が消えたって?」

森は監視など退屈極まりないという様子を隠しもせず、椅子にだらしなく腰掛け大あくびをしながら聞き返す。

「♀Wiz、♂シーフの両名です」
「あー。だったら死亡報告書いとけ」

つまらないことで呼ぶな。森はそう言わんばかりの口ぶりで言って目を閉じた。
そのまま寝てしまいそうな様子に兵士は急いで報告を続ける。

「いえ、死亡してはいません。首輪とのリンクは正常に機能しています」
「そのどこが消えてんだ」
「地図盤上から位置表示が失われたんです」
「なんだと?」

ようやく事態の異常さを理解したように森は椅子から身を起こした。
壁面に設置された巨大な地図へ歩み寄り、しかめ面で眺め回す。

「つまりあれか?脱走されたってことか?」
「そんなはずは…。島外へ出たのであればリンクが切れているはずです」
「じゃあどうしたってんだ」
「さあ…」
「分かんねえのかよ。ちっ、使えねえな」

森は自分にも推測できていないことを棚に上げて舌打ちする。
兵士はさすがにむっとしたようだが、そこは組織人の悲しさ。文句は口に出さない。
代わりにその憤懣は問題を起こした2人へ向かう。

「では違反とみなして爆破しますか」
「ん?んー…。そうだ、ちょっとまて」

森は何か思いついたのか、口の端に笑みを乗せて押し止めた。

「まだそいつらがルール違反したって決まったわけじゃねえだろ?」
「は?…それはまあ地図から消えてはいけないというルールはありませんが…」
「で、具体的にどうなってるか分かんねえ、と。だったら俺が見てくらあ」
「……は!?」

兵士は口をあんぐりとあけて数秒間硬直した。
その間に宣言どおり出てゆこうとした上司を我に返って呼び止める。

「ここはどうするんですか!」
「知るか。俺がいなくても別に困らねえだろ」
「それはそうですが。じゃなくて、本部をカラにする気ですか?」
「不安なら橘のヤツでも呼べよ」

必死に引きとめようとする部下達をあっさりかき分け、森は監視室を出て行った。

*****

「ふむふむ。それは困りましたねえ」

私室へ大慌てで飛んできた兵士の報告を聞いても、ジョーカーの声はのんびりしたままだった。

「たった今、陛下には異常無しとご報告申し上げたところですのに」
「そ、そういう問題ですか?」
「大事なことですよ」

大真面目な顔でジョーカーは言う。
冗談か本気か判断しかねて兵士が返答に困っていると、彼はかすかに不満そうな顔をして話を切り替えた。

「まあそれはともかく。GM森が調査へ向かったのならその結果を待ちましょう」
「いいのですか?」

てっきり森を止めてくれるものと思っていた兵士は意外そうな顔を見せる。
それに対してジョーカーの方も不思議そうな顔を返した。

「原因不明の理由で地図から反応が消えたのでしょう?システムに問題点があるなら解明しないとろくなことになりませんよ」
「ですがもしGM森が2人を殺してしまったら?」

調査というのはただの口実で、森が喜々として出て行ったのは『運動』したくなっただけだと思うのですが。兵士の顔にはあからさまにそう書いてある。
だがジョーカーは眉ひとつ動かさず机の引き出しを開けた。

「その場合正当な理由があればよし、さもなければ彼が代わりにゲームの参加者となるだけです」

こともなげに言って取り出した真新しい首輪を机の上に置く。
兵士はうそ寒そうな表情で首筋をなでた。

*****

「正直なところ、どうお考えですか?」

兵士と入れ替わるように入ってきたGM橘が尋ねた。
彼も別口から報告を受けたらしい。

「どうとは?」
「なぜ♀Wizと♂シーフの位置が分からなくなったかです」
「そうですねえ」

ジョーカーはのんびり相槌を打ちながら部屋の隅へ行く。
どうするかと思えばコーナーテーブルに用意されたポットから紅茶を注ぎ始めた。
そしてゆっくりひと口、じれる橘がせかそうとするのを手で制して言う。

「位置表示が消える可能性として考えていたことはあるのですけどねえ」
「なんでしょう」
「地図が壊れた場合ですよ」
「…なるほど」

参加者の現在地は各自に渡された地図の機能によって追跡される。したがって地図が失われれば持ち主の居場所も分からなくなる。
もちろん地図はそう簡単に破れたりしない素材を使ってあるし、少々切り裂かれたぐらいではかけられた魔法も消えない。
だが炎の中に投げ込まれたりすればさすがにひとたまりもないだろう。

「では2人とも大きな事故に巻き込まれたということでしょうか」
「いえ。地図が両方とも壊れるほどの目にあって持ち主達が生き残るなどあり得ませんよ」
「ならば意図的に地図を破壊した可能性は?」
「そんなことをするべき理由がどこにあります?」

ジョーカーはカップを手に席に戻った。
地図を失えば以降の行動に不自由を生じる。
意味もなく自分で地図を焼く馬鹿がいるとは思えない。

「たとえば♀Wizが例の工務大臣から秘密を聞き出した女だとすれば、こちらに位置を知られることを嫌って壊したとは考えられないでしょうか」
「そこまでして居場所を隠す理由は?」
「それはもちろん反乱を起こすためでしょう」

自説を開陳する橘に対し、ジョーカーは組んだ両手の上にあごを乗せてつまらなそうに言った。

「反乱するつもりならギリギリまで隠さなくっちゃ意味ありませんよ。わざわざ地図を壊してこちらに警戒させるはずがありません。捨てれば充分ですね」
「では時間切れまで禁止区域に潜むつもりでいるとか。それなら捨てただけでは次の禁止区域設定で爆死する可能性があります」
「馬鹿言っちゃいけません。生き残れるのは1人なのですよ」
「それは…うーん」

一言の下に切って捨てられ、橘は言葉に詰まった。
地図の秘密に気付いたのならそれを逆手にとって禁止区域に潜み、他の参加者が減るのを待つという選択肢はありうる。
だがそれは最後の1人になろうという明確な意思と戦略があっての話だ。
そんな人間が2人連れで隠れるはずがない。
やがてジョーカーは首を振って続けた。

「やはり地図が破損したという考えは捨てるべきでしょうね」
「と言いますと?」
「地図の反応しない場所に行ったのでしょう」
「そんな場所があるんですか?」
「島内で一箇所だけ地図が働かない場所があるのは知ってますね?」

ジョーカーは橘の問いには直接答えず、別の質問で返した。
橘は即答する。

「ええ。ここですよね?」

ジョーカー達の居る管理本部内では地図は反応しない。
参加者達が島内各所に飛ばされる前に集められるのがここだからである。
もし飛ばされる前に地図を確認した者が居ても、本部の場所がばれてしまわないようにという用心だった。

「まさか、すでに侵入を許したとお考えですか?」
「それこそまさかですねえ。私が言いたいのはここと同様の仕組みで地図の反応しない場所があるのではないかということですよ」
「そんな場所が?設計か施工段階でのミスでしょうか」
「いえいえ。工務大臣は確かにお馬鹿さんでしたが、こと仕事に関しては手抜きのない方でした。そんな初歩的ミスを見逃すとは思えません。誰かが完成後に手を加えたと考えるのが自然でしょう」
「はあ。すると前回反抗した者の誰かでしょうか」
「難しいですね。時間・手段・資材、全てに欠けます」
「それは…程度問題ではありませんか?我々でも難しいと思いますが」
「1つだけ思いついた方法があります」

ジョーカーは思わせぶりに言葉を切り、橘を見据えながらゆっくり一言だけ告げた。

「ガンバンテイン」

この魔法は先に設置された魔法を部分的に中和する。
とは言ってもギルド砦の各種制限や屋内のテレポート禁止など、建物等へ半永久的に付与された術までは除去できない。
本来は。
だがこの島の場合通常の施設とは違い、短期間に広範囲へ施術する必要があった。
当然あらゆる場所へ直接術を掛けるような余裕はなく、島内四箇所の装置の力で強引かつ一時的に付与しているに過ぎない。
ならばガンバンテインで除去できる可能性もある。

「なるほど。♀Wizが使ったのでしょうか」
「無理です。ガンバンテインはハイウィザードスキルで、しかもジェムストーンが必要です」
「あ、そうでしたか。では誰が」
「過去、この島にハイウィザードの能力を持った者は数人しか来ていません」

ジョーカーはその瞳に心の奥底まで見透かすような光をたたえて橘を見た。

「その方々を思い返してみたのですが、施設整備に来ていた林という技術者を最近見ないのですよねえ。彼がどうしているか知りませんか?」
「……あなたではあるまいし、兵や技術者の動向をいちいち把握してませんよ」
「それは残念。では自分で調べてみましょうかねえ」

にこやかに笑いながらもジョーカーの視線は橘から動かない。
これは明らかな恫喝だ。
ジョーカーは彼が何かやったと確信している。
まだ物的証拠がないから彼が暴発するか口を割るのを待っているに過ぎない。
橘は腰に下げた剣を意識した。

67 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/15(火) 00:39:20 ID:0MPcZNjg
*****

林はハイウィザードだった。
そして魔法技術者として島へ来ていた。
彼はその職務によってシステムに関する充分な知識を得、その知識とガンバンテインを用いて問題の廃屋からシステムの影響を除去することに成功した。
以来彼は職務の合間を見つけては、何の制限も受けないその場所で『囚人の腕輪』を研究。残留思念を利用した殺人衝動の刷り込みを先月までにほぼ完成させた。
折りよくほぼ同時期に反乱でGM数名が失われ、代理が新たに派遣されることになった。
林はそのGMの顔写真とプロフィールを入手。変装の下準備を整えた上で上陸する彼を出迎え、本部に案内すると偽って廃屋へ誘い込んだ。
少々不自然な状況へ誘い出されたのはGMにも油断があったからだろう。
魔法には詠唱が必要であり、さらに島内では兵士も技術者も等しく能力を制限されている。林に限らず誰が相手でも敵ではないはずだった。
だが林はいわゆる「殴り」で、しかも廃屋に能力制限の影響はなかった。
囚人の腕輪と共に密輸したリムーバーをおとりに、隙を見せたGMを背後から一突き。
手馴れた一撃はそのまま致命傷となった。
その後彼はGMの装備を奪い取り、用意しておいた白衣と道具で殺したGMに変装。
殴りであることのカモフラージュのために持ち歩いていたウィザードスタッフと殺人の証拠である短剣はそこに捨てた。
幸いゲームとゲームの間の準備期間だったためジョーカーは島におらず、さらに眼鏡とオールバックという特徴的なスタイルが変装を見破りにくくした。
だからこそ今日この時まで、少なくとも表立って彼を疑ったものは居なかった。
――殺されたGMは名を橘といった。

*****

ジョーカーと真っ向勝負した場合、果たして勝ち目はどれぐらいあるだろう。
橘がそんな計算を始めたとき、部屋の扉を誰かがノックした。
そして返事をするより早く扉が開く。

「お話中失礼します、GMジョーカー。島内に予定外の人物がいるようです」

先刻森のことを報告に来たのと同じ兵士だった。
GM同士の会話に割り込んだだけあってその内容はジョーカーにも意外なものだったらしい。
橘へ向けていた強烈な視線がそれる。

「GM森ではないのですか?」
「いえ。それとは別方面です。♂プリーストと戦ったことで存在が判明したのですが、彼はその相手と会話しパピヨンと呼んでいました」
「会話した?それは寄生虫にしても妙ですね」

ジョーカーは首をひねり、席を立った。
そして部屋を去る間際に振り返り、橘へ意味ありげな笑顔を送る。

「いささか急を要する要件ができましたので、あなたとのお話はまた後で」

その後ろ姿を見送る橘の背を、今になって冷や汗が伝う。
いよいよ姿を消すか何らかの決着をつけるかしないといけなくなった。
計画の結末を見届けてゆくことはできそうもない。
散々苦労して段取りを組んだ仕事だったのに。
彼はひとり歯軋りした。


<GMジョーカー>
位置:不明(管理本部)
所持品:ピエロ帽、他不明(バルムン?)
外見:ピエロ
備考:女王イゾルデの意向を最優先

<GM橘>
位置:不明 (管理本部)
所持品:不明 (バルムン?)
外見:銀縁眼鏡、インテリ顔

<GM森>
位置:不明 (管理本部)
所持品:不明 (バルムン?)
外見:逆毛、筋肉質

68 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/15(火) 00:40:59 ID:0MPcZNjg
って読み直してる30分の間にID変わってる!?
65=64=60です。

69 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/15(火) 12:30:11 ID:nA7J7Pog
GJと言いたいけれど、♀WIZと♂シーフの地下話はNG前提で投稿されてた気が

70 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/15(火) 20:13:53 ID:qKshG2tg
>>65
幾つか修正は必要だけど、おおむねGJだね。
個人的には、外部での皆さん使って何かやりたいって思ってただけに良い感じ。
時間が相変わらず足らないのが口惜しい……

71 名前:65 投稿日:2007/05/16(水) 00:57:58 ID:hB3WIy0w
>>69
264〜266話は投稿者が「NGっぽいけど」と言ってるだけで、ナンバリングは進んでますしNGと確定はしてないのでは?
展開に多少無理があるのが問題なのであれば、その辺に理由付けをすればいいと思って書いてみたのが>>66-67です。
もっとも投下するかどうかはだいぶ迷って、後から書いた>>60を優先したのですが……。
>>70
ありがとうございます。
私も時間がなくて一話書くのにいったい何日掛かってるんだか。。。

72 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/16(水) 18:19:24 ID:Y3/5ewXs
65さんGJ!
修正さえすれば地下での数話はNG扱いしなくても良さそうな感じになってきたね。
何はともあれこれからの展開にwktk

73 名前:60 投稿日:2007/05/18(金) 02:17:09 ID:9OmP2TJM
とりあえず60-61修正完了したので再投下します。
って言っても話の筋はほとんどそのままですが。
もうミスはない…といいなあ…

74 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 02:19:57 ID:9OmP2TJM
268.頭上の敵[3日目午前]


まずいことになった、と♀ケミは脳をフル回転させる。
死にぞこないの逆毛が余計なことを言ってくれたせいで疑われるのは時間の問題になってしまった。
しかも顔見知りの淫徒プリまで出てきた。
考えてた中でも最悪に近い状況だ。
でも、事態はまだ混乱している。

「ん〜。ちょっと増えすぎ?できれば順番に並んで欲しいなあ」
「ふざけんなー!あんたちょっと降りてきなさいっ」
「やーだよー。そっちが昇ってきたらー?」

パピヨンは急に数の増えた『ごちそう』を警戒して少し高度を上げていた。
その高さから地上の♀アコと口げんかしている。
こうしてみると知能のあるパピヨンというのは実に厄介だ。
人の手の届かない高さから中〜遠距離の攻撃ができるのだから。
弓使いがいない今、有効な反撃をできるのは魔法使いだけだろう。
彼女は♂セージと♀マジに視線を向ける。

「魔法使いさんたち、あのパピヨンを撃ってください!」
「あ。ちょっとムカ。そこのおばさんからに決〜めた」
「誰がおばさ――」

ヒュヒュヒュヒュンッ
♀ケミの言葉をさえぎって血色の魔力球が殺到した。

「きゃっ」
「ソウルストライク!あんた、挑発してるんじゃないわよっ」
「ソウルストライク。まあやることは一緒のようですが」

パパパンッ
左右から飛来した半透明の魔力球が血色のそれと空中で交錯する。
ほとんどは相殺し合ったが、弾幕をすり抜けた赤光が一発♀ケミの眼前へ迫る。

「ちっ」
命中直前、グラサンモンクの掌が割り込んで受け止めた。
彼も♀ケミに対する疑念を増してはいたが、目前の敵に攻撃を受けてる最中にそんなことは言ってられない。
薄く煙を上げる手のひらを握り締め、彼は毒づいた。

「思ったより痛いぞ」
「あったりまえでしょ!むちゃするんじゃないわよっ」

悪ケミに叱られるグラサンモンクを横目に♀ケミは考えを素早くまとめる。
どうやら『仲間』達はまだ彼女を見捨てていないらしい。
♂プリの言葉を聴いて全然疑わないはずもないだろうが、これなら挽回の余地はある。

「プリーストさんが危ないです。あの人から引き離さないと」
彼女はそう言って飛び出した。

「ちょっとあんた、まだそんなこと」
「戦えないのに前出るなーっ」
叫ぶ♀マジと♀アコの間を抜ける。
前へ。一気に♂プリの元へ。

「ちょっとー。無視すーるーなー」
木々の間を縫ってパピヨンが襲い掛かった。
中空から再び真紅の光弾を放とうとする。
だが今度はそれが撃ちだされる前に消滅した。

「スペルブレイカー」
「あ、あれっ?ちょっと、邪魔しないでよっ」
「そう言われましてもねえ」
「む。次やっつけるのあんたに決定ー。いーもん別のコトだってできるし」

つかみどころのない笑みを浮かべる♂セージに頬を膨らませ、パピヨンは羽を大きく羽ばたかせる。
「寝ちゃえー!」
その蝶の羽からキラキラ輝くものが広がった。

「きれい…」
「のんきですね。息を止めて」
「鱗粉?…げ、やば」
「何が?」

♂セージや♀マジらはその意味に気付いて息を止めたが、♀アコや♀商人、グラサンモンク達は舞い散るそれを吸い込んでしまった。

「ちょっとキミ!寝てるんじゃないわよ!」
「…あ、あれ?」

足元をふらつかせた♀アコを♀マジが叩き起こす。
♀商人も♂セージが肩を揺さぶって意識を取り戻させた。
睡眠毒も体へ直接打ち込まれた場合と違って広範囲に散布したのでは効き目は薄いようだ。しかもこの人数なら眠らなかった者が起こせる。

「もういっかーい」
「同じことやったって無駄よっ」
再び輝くものが宙に広がるのを見て全員が息を止めた。

だが、その様子にパピヨンは笑う。
「なーんちゃって」
瞬刻の後、触角の間に真紅の光弾が生まれ♀ケミへ向かって殺到した。
息を止めていた♂セージはスペルブレイカーに間に合わない。

「――しまった!」
「きゃあっ!?」
どぱぱぱんっ
鈍い着弾音が連鎖する。
その衝撃に突き飛ばされるように♀ケミの体が転がった。

「ああもうっ」
♀マジは♂セージとアイコンタクトを取り詠唱の態勢に入る。
「ソウルストライク!」

「邪魔っ」
ほとんど同時にパピヨンは魔力球を生み出し、自分がやられたのと同じように相殺しようとする。
その出鼻を♂セージが押さえた。

「はいスペルブレイカー」
「ええっ!?うわわわわっ」
撃ち出される前に赤い光球だけが消滅する。
当然のように♀マジの魔法はパピヨンに命中しようとした。
彼女はとっさに羽を閉じて落下しながら身をよじり、直撃を回避する。
それでも避けきることはできず、魔力に弾かれた羽から鱗粉が散った。

「んもうあぶなっ!って、きゃーっ!?」
「とうっ」「逝け」

地上すれすれで羽を広げ、地面への激突を回避したパピヨンへ2つの影が殺到する。
鋭い拳の連打が左右から襲った。
スピードを殺した直後で飛び立つには間に合わない。避けようにも挟み撃ちで逃げ道が封じられている。
とっさにパピヨンは地面を蹴り、同時に触角を上へ放った。
鞭のように枝に巻きつかせ、一気に体を引き上げる。

「まだだ」
拳が空を切ったグラサンモンクは体を急停止させ、パピヨンへ右の人差し指を向けた。
その動きに合わせて青白く光る気の塊が飛ぶ。
パピヨンは急いで触角をほどいて羽ばたいたが逃げ切るには間に合わない。
かすった肩口から薄黄色の体液がしぶき、背後の羽にピンポン玉大の穴が開いた。

「いったーい!なにすんのよ寄ってたかってー!いじめかっこわるいっ!」
「…やはり単発では無理か」
空中で器用に地団太を踏むパピヨンをグラサンモンクは無表情に見上げた。
指弾は複数同時に撃とうとするとそれだけ余分に「ため」が必要になる。
だから隙を狙うために素早く撃てる単発を使ったのだが、それで倒せるほど甘くはなかったらしい。
彼はゆっくりと気を練り直す。

そのとき期せずして戦いの中に静寂が生じた。
パピヨンと魔法使い達がお互いに出方を窺うことで生じた間。
戦闘に気を取られていた淫徒プリはその空白によって自分のなすべき事を思い出した。
見たところあのパピヨンの能力は通常よりかなり高い。
彼女の攻撃を受けたのであればひどい傷を負っているかもしれない。
淫徒プリは♂プリと♀ケミのところへ駆け出した。

「あんたも無視すーるーなー」
その動きを見とがめたパピヨンは急降下し、魔法の射程に淫徒プリを捉える。
だがそれは地上にいる者たちにとっても同じことだった。
「今度こそっ」
♀マジがソウルストライクを詠唱し、♂セージはパピヨンの魔法を待つ。

しかしパピヨンは闇SSで相殺しようとはしなかった。
「おんなじ技はきかないよーだ」
手近な巨木の幹を巻くように降下し、魔法の射線を切る。
半透明の魔力球は木の表面でむなしくはじけた。

「それではそちらも撃てないでしょうに」
♂セージは即座にスペルブレイカーの準備をやめて素早く別の呪文を詠唱する。
「ナパームビート」
その術はパピヨンではなく、彼女が盾にしている木の枝を目標に炸裂した。
軽い破裂音が上がり、衝撃波が四方に放たれる。
衝撃は幹の陰へも回り込み、狙いどおりに蝶の羽を打った。が、パピヨンは軽く顔をしかめただけで爆圧に乗ったかのように加速する。
目標は彼女のほぼ真下で待ち構えるグラサンモンクと♀アコ。

「いっくぞー」
「来い」
グラサンモンクは気の流れを指先へ集中させた。
飛び込んでくるのが剣を握った人間なら、あるいはさっきと同じ単発なら指弾を放つほうが早かっただろう。
しかしパピヨンの一撃は鞭の間合いと飛燕の速度を持ち、しかも彼は今度こそ仕留めるべく5つすべての気球を操っていた。

バチッ
鈍い音が上がり、打たれた肩から背中にかけて服がはじける。
もちろんその程度の打撃で気を乱すような甘い修行は積んでいない。
だが、攻撃が命中した瞬間にめまいが襲う。
(睡眠…攻撃かっ)
膝から崩れようとする彼の脳裏にどこからか近付く馬蹄の響きがこだました。

75 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 02:21:09 ID:9OmP2TJM
グラサンモンクの動きが鈍ったのを見てパピヨンはにんまりした。
しかし自身の突撃速度が速すぎて止まるにも別の攻撃を加えるにも間に合わない。
衝突を避けてグラサンモンクの脇をすり抜けようとしたその時
「せぇいっ!」
♂モンクの体の陰から♀アコの拳が飛び出した。
狙い打ちに突き出したジャブは正確にボディを捉える。確かな手ごたえが拳に残った。
ところが本命の右ストレートは空を切る。

「速い!?」
「やーいやーいへなちょこぱんちー」
落下のスピードをほとんどそのまま飛翔速度に変えて、ワン・ツーの間をすり抜けたパピヨンは♀アコをからかおうと振り返る。
だがその目が驚愕に見開かれた。
動きを止めたかに見えたグラサンモンクの指先が正確に彼女をさしている。

「破っ」
「うっきゃああああああ!?」
気合と共に5つの気弾がパピヨンに迫った。
とっさに生み出した魔力球で2つを打ち落とし、スピードにまかせて1つを振り切る。
だが残りの1個が羽を貫通し1個が足を直撃した。

「どーして寝ないのっ!?あんたヘン!」
足の傷から体液をしたたらせながらパピヨンは叫ぶ。
「さあ。どうしてだろうな」
グラサンモンクはぼそりとつぶやき、サングラスの位置をなおした。
そこにはナイトメアの力が宿っている。悪夢の名を持つその馬は取り憑いた者に安眠を許さない。
それこそがインソムニアック――すなわち不眠の呪い。

「もーっ。おぼえてろーっ」
パピヨンはスピードに乗ったまま一気に間合いを取った。
攻撃が効かないのならこれ以上あのモンクにこだわるのはまずい。
本能的にそう察して標的を切り替える。

「来るよっ」
「まだやるつもりですか。私だったら逃げますが」
まっしぐらに突進してくるパピヨンを目にして♂セージはつぶやいた。

サングラスのモンクが睡眠毒に屈しなかった時点で勝負はほぼ決している。
いかに素早くても遠距離攻撃の持ち主がこれだけ居る以上パピヨンはジリ貧だ。
だからこそパピヨンもモンクを封じようとしたのだろう。
それに失敗した以上、次の一手で彼か♀マジのどちらかを倒さなければいけない。
となれば狙いは体力と防御力に劣る♀マジへの直接攻撃。
それなりの覚悟で来るだろう。ソウルストライクでは止めきれまい。

彼と同じ判断をしたわけではないが、♀マジは突っ込んでくる敵に対しほとんど反射的に防御の術を唱えた。
「ファイアウォール!」
正しい選択だ。だが。

♂セージは詠唱しながら♀マジへ向かって走る。
「ソウルストライク!」
パパパパンッ
炎の壁の中で魔力球同士が相殺しあう音が連鎖した。
パピヨンも赤いソウルストライクを撃っていたのだ。
さらに♂セージはそのまま駆け寄り、驚き顔の♀マジを突き飛ばす。

「え!?」
ガキンッ
一瞬後。何かが猛スピードでファイアウォールを突き破り、♂セージの胸元で激しい金属音を上げた。

「ちょっとキミ、大丈夫!?」
「♂セージさん!」
♀マジと♀商人が悲鳴じみた声を上げる。
よろめく♂セージの体から、のたうつ赤いものが炎の向こうへ引き戻された。
触角の長いリーチを利して壁越しに攻撃されたのだ。
ファイアウォールを出す位置が近すぎた。♂セージがかばってくれなければ♀マジは心臓を貫かれていただろう。

「ファイア…ウォールっ!」
♀マジは自責の念を押し殺し新たな呪文を唱えた。
ファイアウォールの厚みが倍に膨れ上がる。
パピヨンは素早く飛び上がってそれを避けた。そして不満そうに口を尖らせる。

「ちぇー。やったと思ったのになー」
「え?」
パピヨンの言葉の意味を測りかねた♀マジは眉根を寄せる。
その背後で♂セージが身じろぎした。

「大丈夫?」
「ごほっ…まあなんとか大丈夫のようです」
心配する♀商人に彼は右手のソードブレイカーを上げて見せる。どうやらそれでぎりぎり防いだらしい。

「無事だったんだ。って、わ!?」
「よそ見はいけませんよ」
思わず振り返った♀マジのケープをつかんで♂セージは立ち上がる。
その勢いで2人の位置が入れ替えるのとほとんど同時に頭上へ忍び寄っていたパピヨンの触角が襲い掛かった。
だが不意打ちを狙った一撃にさっきほどの勢いは乗っていない。
彼は刃で受け止めながら素早く詠唱した。

「フロストダイバ…ごほごほっ」
「うわ」

地面から伸びてきた氷の帯に足を取られかけ、パピヨンは慌てて距離をとる。
もし♂セージが咳き込まず、呪文が完全だったら凍結させられていたかもしれない。
捕まったら最後だ。
彼女は高く舞い上がった。
もうすぐグラサンモンクも射程距離に入る。さすがに潮時だろう。

ただ、1人も殺せずに逃げるのは腹の虫がおさまらなかった。
「べーっだ。いーもん、おばさんやっちゃうからー」
パピヨンは♂セージらに舌を出し、ついでに尻まで叩いて見せてから♀ケミ達向けて飛び出す。

「いやもうまったく。私も翼が欲しいですね」
ため息混じりにぼやきながら♂セージはパピヨンを追って駆け出した。

一方、地面に伏す2人の容態を確かめていた淫徒プリは一息ついていた。
パピヨンの放った魔力球のうち♀ケミに直撃したのは1つか2つだけらしい。
いっそ死んでてくれれば面倒がなかったのに。
ちらりと黒い考えが頭をよぎったが、ひとまず彼女のことは置いといて一刻を争いそうな♂プリの治療に専念することにする。
その時

「逃げてっ」
背後から♀商人の声が届いた。
振り返るとすぐ近くまでパピヨンが迫っている。♂セージ達が追っているがどう見ても間に合わない。
淫徒プリは舌打ちし、瞬時に『正しい』選択をした。

「速度増加」
自分の足を速くし、パピヨンが直線的には追って来れないよう立ち木をはさむ位置へ移動する。
そしてその離れた位置から倒れている二人にヒール。
少々利己的に見えるが、淫徒プリでは2人をかばい切れない以上もっとも合理的な判断だった。

ただし、もちろん他の者まで同じ意見とは限らない。
「ちょっと、何やってんのよ!」
「逃げるなー!」
♀アコと♀マジの熱血コンビが怒鳴った。

淫徒プリは少しむっとする。
合理的に考えて、これ以上治癒魔法の使い手を減らす危険は冒せないだろう。
それも素性の怪しい♀ケミや助けられるかどうか怪しい♂プリのために。
言い返そうとしたとき♀ケミがゆっくり身を動かすのが目に入った。

「プリーストさん…」
♀ケミは小さくつぶやき、♂プリを守ろうとするかのように覆いかぶさる。
これは賭けだった。
彼女の嘘を論破されないためには最低限♂プリの口を封じないといけない。
それも♀ケミ自身が手を下すことなく。
だから♂プリもろとも攻撃を受け、それが瀕死の彼へのとどめになるよう仕組んだ。危うい賭けだが今はこれしかない。

そして、彼女の頭上へ蝶の羽ばたきがたどり着いた。

「バイバーイ」
ドドンッ
高速で飛び過ぎるパピヨンの頭部から真紅の鞭が連続して振り下ろされ、ぱっと血しぶきが上がった。

76 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 02:27:03 ID:9OmP2TJM
状態欄は1レスの許容量に収まらなかった&無駄に長くなるので省略します
必要であれば>>61と同じ(グラサンモンクの睡眠のみ削除)なのでそちらを参照ください

77 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 08:11:41 ID:r.UdAniY
確か一人の人が続けて書くのはNGだよね。たとえ違う話でも。
だからどちらかはNG扱いになるよ、60さん。

78 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 08:45:43 ID:VSwNW4qk
あのルールは違うPTなら1日、同じなら3日あけないとダメだったと思う
この場合はどっちみち日が開いてるからいいんじゃね?
つかこの流れの遅さなら今更このルールに拘る必要もないと思うけどな、進むだけマシだし

79 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 09:05:02 ID:r.UdAniY
それで、一人の人が話を全て回していいって言うのはどうかと思うよ。
前回もそれでgdgdがあったの忘れたの?

80 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 14:07:48 ID:dfuZFHp2
私は採用で構わないと思いますが・・・
この後も60さんだけで話を展開させてく訳でもないでしょうし、乱戦編も地下編も、ここまで話の流れが進まない状況が続いていると
話の繋ぎ手となってくれるのは他の書き手さんにとっても(どちらの展開にしても)有難いです。

・・・一応自分もいち書き手なので。

81 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 15:32:37 ID:8gPab/12
過疎ってるからといってルールを破っていいわけないだろ。
何の為の決まり事だと。

82 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 17:17:40 ID:VSwNW4qk
どっちみち60の人はルールには抵触して無いから採用でいいだろ
1日1本も確か24時間単位じゃなく1日単位で1本だったからギリセーフだしな
……本人はID変わらない内に投下しようとしたようだけど、変わってなかったらNGだったんだぜ

83 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/18(金) 21:01:07 ID:6SzUxkiQ
まぁ、書き溜めておけばいいんじゃね?と言う話ではあるな。
連投規制にあわせる形で投下していけば大丈夫だし、
上にも出てるがルール議論以前に進まない事の方がリレーやるってスレの意義からすれば問題な訳だし。
それに一人リレーについても、もうちょっと加速してから考える事にしても十分間に合う問題だと思う。

84 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/19(土) 09:14:57 ID:Sx.2xA2U
随分前にフラッシュ作るって言ってた誰かです。
今頃フラッシュじゃなくて動画作ったので、良かったら見てください。
初めて作ったので勝手がわからないので、変なところがあるかもしれませんが笑って見逃してorz

ニコニコ動画
www.nicovideo.jp/watch/sm316334

Youtube
www.youtube.com/watch?v=3mvK62mRqn8

85 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/23(水) 10:30:52 ID:yPl0bQRc
>>84
長い文章が読みにくいのが気になったかな?
もう少し時間とってくれるか、短くしてくれると見やすいと思う

86 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/23(水) 13:32:23 ID:R7AYd/e2
フラッシュといえば前にあった受難シリーズの曲を使ったやつがかなり良い出来だったな
久しぶりに見てみたいからだれか持ってたら上げてくれないかな

87 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/23(水) 17:40:53 ID:yPl0bQRc
「バトROワ応援どころ」さんに置いてあったよ

88 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/24(木) 14:55:03 ID:8owX7enk
観てきた、情報マジありがとう

89 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/26(土) 01:38:54 ID:r1fj8JFg
ふと2回目を頭から読み返していたら、♂WIZが電人HALに見えた。

90 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/26(土) 10:06:20 ID:M4cHg9p6
無理やり復活させられた♂WIZ2は即デリされるわけか

91 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/05/27(日) 09:31:02 ID:c0md7oGk
Wiki( wiki.spc.gr.jp/battleROyale/ )のトップページ以外 削除完了。

92 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/10(日) 23:53:02 ID:mZ8ZWDpA
大分ハデに止まってるなぁ……やっぱ話進めるにはマーダーが足りないのかな

93 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/11(月) 04:09:08 ID:9shL.rfw
自発的な有力マーダーが3日目夜〜朝に全滅したのは確かに動かしにくいな。
パピヨンはイレギュラー気味だしメイン参加者は間接的悪役タイプと脱出しようとするタイプ、恐慌状態なタイプしか残ってないと書きにくいな・・・。

94 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/17(日) 20:41:32 ID:T6nYFuBA
逆に言うと、結末に向かってスタートするにもいい頃だと思うけどな。

95 名前:R-0109 ◆eVB8arcato 投稿日:2007/06/22(金) 00:26:20 ID:3AFN1RhU
お久しぶりです。

ツアーの予定分が終わりそうなのでリベンジラジオを6/30の21:00ぐらいからやろうと思いますが宜しいでしょうか?

前回と同じく、実況アドレスとラジオアドレスは当日貼りにきます。

96 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/23(土) 00:52:37 ID:hMqi54Co
静かだ…晒すなら今のうtry

ttp://www.fileup.org/fup154803.swf.html
受信PASS→br2

ラジオリベンジ企画大感謝!
…の、勢いで作ったもののスタート(+リプレイ)画面考えてなかったという
前回と同じミスぶちかましました。|||orz

ラジオ当日には修正版晒…して、よろしいか?
(※現目次頁最新話までの若干ネタばれ風味)

97 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/23(土) 08:34:37 ID:LmZ2jMnI
6/30....土曜か。

98 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/23(土) 18:00:42 ID:dG6tb9OU
前回参加できなかったから、今回は頑張って時間空けようかな……

99 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/26(火) 04:32:53 ID:PaDpcu16
お!
今回は聞けそうだ〜

100 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/30(土) 11:48:22 ID:x7MLVdyk
すっかり雑談になっとるなぁ^^;
書きたいのだがさすがにここまで話し進んでるとちょい難しい;;
次のBRに自キャラ出す文章書きますね

101 名前:SiteMaster ★ 投稿日:2007/06/30(土) 15:22:34 ID:???
私も参加できそうです。
肝心な時間に寝てそうですが…(汗

それ以前に、私が参加しても話せることないですけどね(笑

102 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/30(土) 17:07:42 ID:PLwNaLH2
他うpろだにFlash一本晒して参りました。

ttp://up.uppple.com/upload.cgi?mode=dl&file=4299
受信パス→br2

最終的に気付けば4.8Mサイズに。
ので存外に重いです…。
お茶請け代わりにでも一見して頂ければ幸いです。

103 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/30(土) 20:32:33 ID:hwEC.UMA
>>101

個人的には萌え板の現状とか聞きたいなぁ。

104 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/30(土) 20:40:41 ID:C2EDy6uA
待ちきれなくてもう来た俺が通りますよ。
結局どこでやるんだろうか。

105 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/30(土) 20:46:45 ID:yqDeSFvU
>>102

DLしようとしたら、再生されてしまう_| ̄|○

106 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/06/30(土) 20:53:30 ID:dCIdfsbc
眠いからラジオ最後まで起きてられるかちょっと心配だぜ…

107 名前:R-0109 ◆eVB8arcato 投稿日:2007/06/30(土) 20:57:53 ID:jLP0ot0U
ttp://r-0109.ddo.jp:8000/
ttp://spill.jp/play.html
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1178453083/

上がラジオアドレスで
真中が聞き方で
下が実況(前回の続き)です

108 名前:SiteMaster ★ 投稿日:2007/06/30(土) 23:42:40 ID:???
>>103
たとえば、どんなです?

109 名前:103 投稿日:2007/07/01(日) 04:28:24 ID:/kMsA1kg
酔い潰れてて聴けなかった。orz
管理人さん申し訳ない。

110 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/03(火) 06:21:09 ID:HM0/DDIc
とりあえず地下云々もそのまま通すってことでwiki更新しといたよ

111 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/06(金) 11:28:55 ID:qGlR.bkE
ご苦労様ー。とりあえず茶でも。
つ且~

112 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/25(水) 19:07:26 ID:JCaX0UHI
一気に過疎ったな……

113 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/26(木) 04:23:31 ID:w5QHLcHM
うう…此処はどうなる…?

114 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/27(金) 08:20:30 ID:.aCQHwFs
夏休みな人はじっくり考えて投下してみようぜ。

115 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/27(金) 21:47:36 ID:E2FXQEdE
ラジオのあった週に投下してみるぜって言ってた人はどうしてるんだろうな

116 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/28(土) 23:48:05 ID:NPL0o4gk
↑ほんとラジオで言ってた人楽しみにしてたのに・・・

117 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/31(火) 23:48:14 ID:Fi7WAoe6
同じくワクテカしてたのですがもう一ヶ月たっちゃいましたねー
仕方ないので自分でちょっと書いてみましたよ

118 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/07/31(火) 23:48:35 ID:Fi7WAoe6
269.イン・ザ・ダーク[3日目午前]


殺せ、殺せ、殺せ、殺せ
その声はほとんど物理的な圧力を持って彼を押しつぶそうとする。

暗い、暗い地下道で。
決して傷つけてはならぬひとを前に。
光の差しこまぬ闇を背に。
♂シーフは耐える。

殺せ(いやだ)
殺せ(だめだ)
そいつは(このひとは)
敵だ(希望なんだ)

意識ははっきりしている。
意志もゆらいでいない。
すくなくとも、まだ。

それらを押しのけようと蠢くものは衝動。
砂漠でオアシスを目前にしたかのような欲求。
肉に刃をつきたてる感触。血のにおい。味。
それらが魅惑的な声で彼を呼ぶ。

のどが鳴った。
さほど冒険者経験の長くない彼でも、砂漠で動物を狩ったことはある。
そして狩りの獲物は食べるものだ。
もしも今、彼女を手にかけたら。自分はその肉に食らいついてしまうかもしれない。

(だめだっ)
危険な妄想を振り払うように頭を振る。
力と理性を振り絞るようにして短剣を振り上げ、腕輪へ振り下ろす。
カチンッ

「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…………っ!!!!!!!」
言葉にならない絶叫がほとばしった。
刃先の振動が腕の骨を伝って背筋を駆け上る。
快感に近くて、でも何かが違う、もどかしい感覚。

腕輪にはわずかな傷がついただけだった。
直前で右手が勝手に動いたせいだ。
そのため短剣が腕をかすめ、浅い傷口から血がにじんでいる。

「あは、は、ははは、あは…」
引きつったような笑い。瞳から涙があふれる。
傷口からしたたる血に、痛みより歓喜を感じたから。
耐え切れなくなる前に彼はバックステップを踏んだ。

闇の奥。ほとんど何も見えないその場所は焦げ臭い臭いがした。
がしゅ、と炭化した何かを踏み潰す感触。
闇が深く感じるのは壁や天井が黒くすすけてるせいもあるのだろう。

彼はその場所でめくら滅法に両手を振り回した。
手足が何かに当たるたび、そこへ何度も何度も短剣を叩きつける。
半ば焦げ、半ば朽ちた家具は短剣でもたやすく切り崩せた。

ときどき壁に当たる固い感触に手が痺れ、傷つく。
それでよかった。
暴れつづけて破壊衝動を満たし、体力を使い果たせれば。
血への渇望を忘れていられれば。

なのに。
「♂シーフ君!」
♀Wizさんの声が聞こえた。

せっかく見えなくしたのに、容貌が、表情がありありと思い浮かぶ。
渇望がよみがえる。
あのきれいな人を滅茶苦茶にしたい。
本能の深いところが、ずくん、とうずく。

我知らず声の方へ足が向いた。
「大丈夫?」
心配そうな響き。
明かりがゆっくりと近づいてくる。

「…にげてください」
平板な声で言いながら心のどこかで叫ぶ。
だめだ。
いま逃げられたりしたら間違いなくその背に飛びかかる。

止まって。
いや、むしろ
僕を殺して。

衝動を恐れ、心の表面ではそう言って。
でももっと深いところが考える。

♀Wizと戦う方法を。

彼は心の底から己を恐れた。
だから本来恐るべき敵である男が現れたとき、彼はむしろ感謝した。
白い服を着たそいつは野太い声で言った。

「お前ら、こんな所でナニしてた?」


<♂シーフ>
現在地:D-6→北か西の半島を目指す→謎の地下室?へ
所持品:多めの食料 +7トリプルハリケーングラディウス 囚人の腕輪?
容 姿:栗毛
備 考:ハイディング所持 盗作ローグ志望でちょっと頭が良い ♀Wizと同行 呪詛に体を蝕まれる
    ♀WIZの姿に亡き母が重なる 死を覚悟?
<♀WIZ>
現在地:D-6→北か西の半島を目指す→謎の地下室?へ
所持品:クローキングマフラー ロザリオ(カードは刺さっていない) 案内要員の鞄(DCカタール入) ウィザードスタッフ
容 姿:WIZデフォの銀色
備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 ♂シーフと同行 年の事は聞かないでね?
状 態:容態安定。ただし全身に傷跡が残る。HPは半分ぐらい?希望が見えてきて気持ちが前向きに

119 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/02(木) 19:02:29 ID:WIMts1Qk
久しぶりの新作投下おつー

120 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/02(木) 20:34:32 ID:z54Jy6xg
ありがたやありがたや。
時間があれば自分も創作したいんだけどな・・・。

121 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/16(木) 15:51:32 ID:Tj43/Eng
夏休みなのにすんごい停滞してる……。ラッパー側全然進んでなかったので進めてみました。

270.決意[3日目午前]

突然の叫び声。
幾度となる魔法の行使と思われる音。
どう考えても、大規模な戦闘が行われている。
二人の騎士は、不安を消せないでいた。


270.決意[3日目午前]

突然の叫び声。
幾度となる魔法の行使と思われる音。
どう考えても、大規模な戦闘が行われている。
二人の騎士は、不安を消せないでいた。


本当なら、今すぐにでも飛び出して助けに行きかったであろう。
だが、♂モンクと♀騎士を放っていくわけにはいかない。
「どうしたものだろうな……」
今更だが、そう漏らさずにはいられなかった。
♂モンクは一向に目覚める気配がないし、♂騎士自分、いつ狂うか分からないのだ。
「♂プリーストさんと♀ハンターさんは大丈夫でしょうか……?」
不安になったのか、♀騎士が聞いてきた。
確かに定時放送を聞いていれば、ミストレスが死んだということが分かるはず。
ならば、安全になったここに戻ってくるはずである。
……だが、一向に戻ってくる気配がなかった。
「まさか、さっきの叫び声は……」
♀騎士は、はっとして顔を上げる。
その顔は、不安の色で覆いつくされていた。
「……何かあったんでしょうか……助けに……」
「だめだ」
助けに行かないと、と言おうとしたのだろう。
♂騎士が、それを遮った。
「♂モンクはどうするんだ? 放っていくわけには行かないだろ?」
「でもっ……!」
♂騎士の指摘に、♀騎士は反論できない。
♂騎士は更に続けて、
「……それに、もし誰かに襲われたらどうするんだ? 最悪、殺さないといけないかもしれない」
その言葉に、♀騎士は何も言えなくなった。
確かに、自分には人を殺す自信が無い(尤も、それは♂騎士も同じなのだが)
♀アーチャーの件も、♂騎士が一緒だったから出来たのだ。
一人であれば、出来なかっただろう。
更に、精神的な問題もあるが、武器の問題もあった。
♀騎士は、シールドと錐しか持ってないのだ。
盾のスキルが豊富なクルセイダーならともかく、騎士である。
錐だけでは、どう前向きに考えても威力不足は否めない。
♀騎士には、反論する材料は無かった。
「……ごめんなさい……」
何も言えず、♀騎士は謝るしか出来なかった。
「……ごめん、俺も言いす……っ!!?」
♂騎士もバツが悪かったのか、謝ろうとしたときだった。
「ぁ……うああああっ!!?」
突然の叫び声に、♀騎士は顔を上げる。
そこには、突然苦しみだした♂騎士の姿があった。
「♂騎士さん!? どうしました!?」


身体が、熱い。
焼けるように、このまま消し炭になってしまうのではないか。
先ほどまで無かった痛覚が全身を駆け巡る。
(ちくしょう!またか……!)
最初や二回目より、酷い。
あまりの痛みにのた打ち回り、その度に更なる痛みが襲ってくる。
まるで、全身の痛覚が異常に鋭敏化しているような……。
――そろそろ疲れてきたのではないか?
まただ。
頭の中に直接響いてくる、不愉快すぎる声。
――いくら足掻いても逃げられんぞ? この現実からはな。
  それともどうした? 我に屈する気になったか?
屈する? 俺が?
「……っ黙れよ!! 誰がお前なんかに……ぅあっ!?」
――ほう、あくまでも抵抗するか。
  抵抗したいのならばすればいい。だが、いつまでもつかな?
  あの時もそうだった。あれだけ強く誓ったのにも関わらず、結局は自分で殺してしまったではないか、♂アルケミストを。
「あれは……っ!」
自分が、またしても恐怖に負けただけだ。
もう負けるつもりはない!
『「信じて……くれないか、俺のこと」』
裏切られても尚、無理して笑顔を見せた親友の顔が脳裏に浮かぶ。
そう、俺はもう負けない、負けるわけにはいかない!!
――♀アーチャーの時はどうなのだ? あれこそ、自身の渇きを潤したかっただけではないのか?
  奇麗事を言ってはいたが、それは渇きを潤すための口実であろう? 私には分かるぞ。
  さあ、言うのだ。「もっと殺したい」とな。
「違う! 好き勝手なことをベラベラと喋るな!!」
俺は、あの子が望んだことをしただけだ!
自分から望んだわけじゃない!
『「……ありがとう」』
……ありがとう? 何でありがとうなんだ?
だが、少なくともあの子は、『王子様』といることを望んでいた。
俺は……。
……あれ?
なんだ?
気持ちよくなってきた……な。
――やはり人間は単純で良いな。いとも簡単に手中に落ちてくれる。勝手に暴れて体力を消耗してくれるとは、やはり単純すぎるな。
  あの白装束達にも感謝しなければな。お前も感謝するのだぞ? あの白装束達にな。
白装束?
ああ……そういえばそんなのもいたな。
なんか、どう……でも良くなってきた……。
さっきまでは不愉快だったこの声も、なんか心地よく響く……。
――さて、周りに獲物はたくさんいることだ。まずはその物達から殺してしまえ。
  なに、なんの事はない。そのツルギを、一振りするだけでいいのだ。一撃でカタがつくぞ。
  少なくとも、今のお前にはそれだけの力がある。さあ、やるのだ。
ツルギ……ねえ。どちらかと言えばクレイモアの方がいいんだがな。
――青箱をまだ開けてなかろう? 後で開けてみれば良い。
  そこに♀騎士がいるだろう? さっさと殺してしまえ。
♀騎士、か。
そうだな……。


ん?


なんだ?


『「ごめんなさい。あたし、最後まで迷惑を……」』


誰だ?


『「あなただけを苦しませることなんてできません」』


ダレダ?


『「私の手も、汚れていますから」』


アあ、コれは……。

122 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/16(木) 15:52:20 ID:Tj43/Eng
「……っ調子にのるな!! お前が俺に従いやがれ!!」
先ほどまでの気持ちよさは微塵と消え、再び痛みが全身を駆け巡る。
だが、先ほどまで痛みはなかった。
「さっきからごちゃごちゃとくだらない事をやかましいんだよ!!」
同時に、ものの見事に奴の術中に嵌ってしまった自分を悔いた。
こんな思いは二度とごめんだ。
――貴様、何を言っているのか分かっているのか? 貴様の汚れた手では……
「黙れっ!! 俺はもう逃げない!!」
そうだ。
俺はもう迷わない。
大切なもの、守りたいもの、そこにたくさんあるじゃないか!
迷う必要なんて、ないんだ!
だからこそ、俺は自らを鼓舞するように叫んだ。
「白装束だかなんだか知らんがな、俺は守りたいものを守る! 奪おうとする奴は叩き斬ってやる!!」
だから、もう死ぬわけにはいかない。
守れるだけ、精一杯守る。その為に精一杯生きる。
……あいつも、その方が喜ぶだろうしな。


「あの……大丈夫ですか?」
♀騎士が、心配した様子で声をかける。
「ああ、悪い。もう大丈夫だ。吹っ切れたよ」
今までの悲観的な顔はもう、無かった。
もう、吹っ切れたらしい。
が、
♀騎士の心配所はそこではなかったらしい。
「いえ、そうではなくて……なんか一人で叫びまくってましたけど……」
「………」
♂騎士は返す言葉も無く、先ほどの声を精一杯恨んだ。
「……そういや、青箱まだ開けてなかったな……」
♂騎士は、袋から青箱を取り出した。
♀プリーストの、遺品であろう。
「それは?」
♀騎士が聞いてくる。
「大切な人の……形見だ。守ってやれなかったからな……」
少し悲しげな表情を浮かべながら、そう言った。
「あ……ごめんなさい」
その様子を見ながら、♀騎士はすぐさま謝った。
知らなかったとは言え、余計なことを聞いてしまったと。
だが、
♂騎士の、その表情とは裏腹に、強い決意の色があった。
(でも、守りたいものが全部無くなったわけじゃない)
「いいんだ。俺は、仲間を守りたい。だから、精一杯生きたい。あいつも、それを望んでるだろうから」
その♂騎士の姿は、どうみても不安定だった今までとは別人とも言えた。
「まあ、開けるか。役に立ちそうなものがあるかもしれない」
辛気臭い話は無しにして、と。
それに、♀騎士はそうですね、と同意した。
そして、その青箱を開けてみる。
出てきたのは、幅広の巨大な剣であった。
―カッツバルゲル
それは、攻撃と防御を兼ね備えた、まさに♂騎士が望んだ武器と言える。
「これは……」
「俺は元々両手剣の方が得意だしな」
♂騎士は、手に入れたばかりのカッツバルゲルを一振りしながら言った。
「ツルギは君が使うといい。短剣だとリーチが短すぎるだろ?」
♀騎士は一瞬、返答に困った。
だが、♂騎士の好意を無駄にするわけにはいかないし、♂騎士が言うことも尤もだ。
何より、自分だけ楽するわけにもいかなかった。
「……ありがとうございます」
だから、♂騎士から差し出されたツルギを受け取らないわけにはいかなかった。
刀剣類を持つことには抵抗がある。あるけど、それを理由に逃げるわけにはいかなかった。
目の前の騎士も、もう逃げない、と強く決意を表していたから。
「ああ、そういえばカード帳もあったな。♀スパノビのだが……」
♂騎士が言った、その時だった。


がさっ


草むらからである。
その音に、二人はすばやく反応した。
「誰だ!?」
♂騎士は、♀騎士と♂モンクを庇うように、カッツバルゲルを構える。
「ひっ!?」
その視線の先にいたのは、♂プリーストに抱えられて離脱したはずの、♀ハンターだった。


<♀騎士>
現在地:E-6
所持品:S1シールド、錐 、ツルギ(♂騎士から受け取る)
外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳
備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように
状態:JT2発被弾 背に切傷

<♂モンク>
現在地:E-6
所持品:なし(黙示録・四つ葉のクローバー焼失)
外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁
備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷
状態:腕に裂傷、JTを複数被弾、意識不明、通電によるショック症状

<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:ツルギ、S1少女の日記、カッツバルゲル、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
   できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
   両手剣タイプ
状態:痛覚喪失?、体力は半分ほど 精神は安定? 個体認識異常を脱する。
   必要とあらば、人間を殺すことを厭わなくなった? 仲間を守りたい

123 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/16(木) 15:58:12 ID:Tj43/Eng
忘れてた

<♀ハンター>
現在地:E-6
所持品:スパナ、古い紫色の箱、設置用トーキーボックス、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3]
スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング
備 考:対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり
状 態:気絶から回復、でもHP赤い ♀スパノビと離れ、再び誰も信用できない状態 ただただ恐怖

<ふぁる>
現在地:E-6
所持品:リボンのヘアバンド
スキル:ブリッツビート スチールクロウ
備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇
状 態:JTによる負傷で気絶中

124 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/17(金) 14:13:11 ID:GCgEsyY2
271. Greed (3日目午前)

「いや・・・・・・・・・」
ふたりの騎士の前で、相棒であるファルコンを抱きかかえて、♀ハンターは立ちすくんでいる。その表情に貼り付いているのは、まるで幽霊でも目にしたかのような恐怖の色。がくがくと全身を小刻みに震わせて、彼女は己が弱者であるということを全身でアピールしているかのように見えた。
「君は・・・」
♂騎士にとって、♀ハンターの顔を視認するのは初めてだった。ミストレスとの激戦の渦中では未だ、彼の瞳は“人”を映すことを拒んでいたから。
しかし、情報として得てはいる。あの場に、ハンターの女性がいたということは。
「あなたは、♀スーパーノービスさんと一緒にいたハンターさんですよね?」
声をかけられた♀ハンターが、びくりと大きく反応する。
――そう、♀スーパーノービス。俺の不手際の所為で命を落とした、その少女の仲間であったと。
「一体、どうしたんです? ♂プリーストさんは・・・」
♀騎士は駆け寄ろうとするが、いやいやをするように♀ハンターは後ずさる。
「来ないでっ!!」
「・・・・・・何があったんですか? よければ、教えて・・・・・・」
足を止め、優しく話しかけようとする♀騎士だが、
「嫌なのっ! もう、嫌だよおっ!!!」
♀ハンターの口から飛び出すのは、ただ拒絶の意思のみ。だが、後退する♀ハンターは、たまたまその足元にあった木の根に足を取られ、尻餅をつく。
「やだ・・・・・・・やだ・・・・・・」
目尻に涙を浮かべ、ぎゅうっと強くふぁるを抱きしめたまま、♀ハンターは起き上がることも忘れてどうにかして距離を取ろうとする。その視線は辺りを目まぐるしく彷徨っては♀騎士に戻り、♀騎士に視線が移るたびに見たくないとばかりに視線を逸らす。何も考えられなくなっている今の♀ハンターは、♀騎士の存在を恐怖の対象としか捉えていない。
♂騎士も♀騎士も、どうすればいいのかわからなかった。原因は不明だが、♀ハンターに何かがあったのだろう事は察しがつく。まずは彼女を支配する、恐怖という枷を外さなければ。この場に♀アコライトでもいれば、ぐいっと首根っこでも掴んで檄を飛ばすことくらいやってのけたのだろうが、残念ながら♂騎士も♀騎士も、そんなキャラクターではない。
そうこうしているうちに♀ハンターは近くに生えていた木の幹に身体を預けるようにしながらよろよろと立ち上がる。膝はがくがくと震え続けているが、今は逃げなくては。
・・・・・・・・・“何処へ?”
それすらも思考の中からはすっぽりと抜け落ちたまま、♀ハンターは♂騎士達に踵を返すと、おぼつかない足取りで駆け出そうとした。
・・・・・・・・・だから、今の彼女には危険を知らせる森の中の鳥達の『声』も、耳には入っていなかった。
「あ、待って・・・・・・!」
兎にも角にも、♀ハンターをこのまま放っておくわけにはいかない。そう判断した♀騎士が、後を追おうと一歩を踏み出した時。
がくん、と。
前方で、♀ハンターの身体が大きく跳ねた。
「・・・・・・・・・!!」
どさり、と、大事そうに♀ハンターに抱えられていたふぁるの身体が地に落ちる。
そのまま、♀騎士の目の前で今度は、♀ハンターの身体が少しだけ、宙に浮き上がった。
「・・・・・・や・・・・・・!!」
♀ハンターは空中で藻掻くように身体を捻らせるが、自由が効かないらしく、手首と足首が虚空を掻き回すだけだ。苦しそうに呻き声を洩らす♀ハンターだが、♀騎士には今目の前で何が起こっているのかがわからない。
・・・・・・だが、彼女の身に何かが起こっている。助けなければ。
「待ってて、今――!?」
駆け出そうとした♀騎士の足首に、何かが絡みついた。
「きゃあっ!?」
そのまま凄い力で足元を掬われ、転倒する。見れば、地面から不気味な長い触手のようなものが何本か突き出し、それが己の足に絡み付いている。
「何、これ・・・」
「何だってんだ・・・!?」
少し遅れて反応した♂騎士が♀騎士の前に飛び出した、その瞳に映ったのは。
♀騎士を襲ったものと同じ、何十本ともいう触手によって全身を空中で絡め取られ、ぐったりとしている♀ハンターと、その触手の主――♂騎士は知る由もないが、♂ローグの屍体より生まれ出でた、異形の寄生虫の姿だった。紫色の、不気味に蠢く柔らかそうなぬめった塊。子供くらいの大きさはあろうそれの全身から、躍動する何十何百という触手と、おそらくは体液なのだろう不気味な液体が流れ出していた。
「ペノ・・・メナ!?」
・・・できそこないのペノメナ。それが♂騎士の第一印象だったが、すぐにそんな感想など頭の中から追い払い、瞬時に判断する。
「放し、やがれぇ!!!」
カッツバルゲルを大きく振りかぶると、♀ハンターの身体を空中に固定している触手郡に向かって飛び掛り、大きく――
薙いだ。
但し、それを行ったのは寄生虫の触手、吹っ飛ばされたのは横合いからの直撃を喰らった♂騎士のほうだったが。

125 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/17(金) 14:13:57 ID:GCgEsyY2
「♂騎士さんっ!」
♀騎士は、自分の足に巻きつく触手を千切ろうとするが、うねる触手の動きと粘液によって阻まれ、うまくいかない。
「・・・・・・!!」
逡巡するが、すぐに♂騎士から受け取ったツルギを抜くと、己を拘束せんとする触手に突き立てた。ぶつり、と切れた触手は、体液を撒き散らしながらびちびち跳ね回っていたが、やがて動かなくなった。
「加勢、しますっ!」
「・・・・・・ッ、くそ」
触手の攻撃によって地面に転がされた♂騎士は、大剣を地面に突き立て、支えに立ち上がる。まだ、ミストレス戦で失った体力を取り戻せていないのだろう。とはいえ、それは♀騎士も同じことだったのだが。
触手でふたりの騎士を包囲するように牽制しながら、寄生虫はその本体の部分をぶるぶると震わせた。次の瞬間、ぐぱあ、と粘液の糸を引きながら、寄生虫の身体の一部が、裂けた。恐らくは、これが“口”なのだろう。それが証拠に、裂け目に体積を合わせるかのように寄生虫の全身も大きく膨らみ、獲物を呑み込まんと待ち構えている。同時に、触手に弄ばれて宙ぶらりになっていた♀ハンターが、徐々にその高度を増し、段々と寄生虫の本体の真上へと移動を始めた。否、♀ハンターを掴んだ寄生虫の触手が、獲物を己の真上へと引き寄せ始めた。
「いっ・・・、いや、離して、やだ、嫌・・・・・・!!!」
これから自分がどうなるのか、流石にそのくらいは思考が回ったらしく、♀ハンターは残った体力で必死に抵抗を試みた。両手両足を何とか動かそうとするが、巻きついた触手によってがっちりと締め付けられており、♀ハンターの力では全く動かせない。じわじわと、嫌でも♀ハンターの視界の端に映る景色が、寄生虫の頭上へと移動していくのがわかる。
「やだ、やだ、やめて、おねがい、ふぁる、おねえちゃん、嫌、たすけて、やだよ、わたし、嫌、いやぁ・・・・・・・・・!!!」
最早♀ハンターに許されたことは、髪を振り乱しながら掠れた声で叫び続けることで、せめてもの抵抗の意を示すことだけだった。
「♀ハンターさん!!」
「止めろぉっ!!」
二人の騎士が同時に剣を構えて駆け出そうとするが、地中から触手が次々と飛び出しては二人に絡み付き、その動きを封じようとする。
そして、♀ハンターの全身に纏わりつく触手が彼女を解放し、
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!」
ばくん、と。
寄生虫の口の中へと、落下した。
「嫌、ふぁる、たすけ・・・・・・・・・やだ、やめ、おね・・・い、たすけ・・・・・・!!!」
海で溺れて波を掻き分けるみたいに、閉じていく寄生虫の口の中から♀ハンターが必死で手を伸ばし、顔を出し、脱出を試みようと宙を掴んでは再び寄生虫の中に沈んでゆく。
「・・・・・・・・・・・・・・・嫌・・・・・・やめ・・・・・・たすけ、・・・・・・・・・・・・!!」
「っそ、離せ、離せえっ!!」
目の前の光景に顔を歪めながら、♂騎士は全力でカッツバルゲルを振り回し、触手をまとめて叩き斬った。そのまま、♀騎士に纏い付く触手にも斬撃を加え、断ち切る。
「・・・・・・、ありがとうございます・・・!」
両腕が自由になった♀騎士も、ツルギで残る触手を薙ぎ払った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・嫌・・・ぁ・・・・・・」
完全に♀ハンターが寄生虫に飲み込まれると、閉ざされた口は再び隠れ、膨張していた寄生虫自体の大きさも元に戻った。♀ハンターをひとり分飲み込んでいるため、その形は“人型に”歪になってしまっているが。
だが、貪欲に、食欲に支配された寄生虫が、獲物を一匹捕食したところで満足する筈がない。醜悪な蟲は触手を揺らめかせながら、更なる獲物に狙いを定める。
「まだ、生きてる! 今ならまだ、助けられる! さっさとこいつを倒せば!」
♀騎士は迷いを払い、ツルギを構える。
ぐっと握り締めた、剣の柄の感触。どこか懐かしさを感じる。
♂騎士は迷いを払い、叫ぶ。
「俺は、騎士だ! 護ってやる、みんな、みんなだ!!!」


<♀騎士>
現在地:E-6
所持品:S1シールド、錐 、ツルギ
外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳
備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように
状態:JT2発被弾 背に切傷 触手によるダメージ自体はありません

<♂モンク>
現在地:E-6
所持品:なし
外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁
備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷 戦闘場所より少し近くで気絶中
状態:腕に裂傷、JTを複数被弾、意識不明、通電によるショック症状

<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:ツルギ、S1少女の日記、カッツバルゲル、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
   できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
   両手剣タイプ
状態:痛覚喪失?、体力は半分以下 精神は安定? 個体認識異常を脱する。
   必要とあらば、人間を殺すことを厭わなくなった? 仲間を守りたい

<♀ハンター>
現在地:E-6(寄生虫体内)
所持品:スパナ、古い紫色の箱、設置用トーキーボックス、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3]
スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング
備 考:対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり
状 態:寄生虫に捕食されそう ♀スパノビと離れ、再び誰も信用できない状態 ただただ恐怖

<ふぁる>
現在地:E-6
所持品:リボンのヘアバンド
スキル:ブリッツビート スチールクロウ
備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇
状 態:JTによる負傷で気絶中

<寄生虫(寄生磯巾着?)>
現在位置:E-6
外見:大きい紫色のヒドラっぽいもの(ペノメナ?)
備考:♂ローグから孵り、捕食 両生類?
状態:♀ハンター捕食中

126 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/17(金) 14:19:08 ID:GCgEsyY2
便乗?って訳でもないけど、自分もちょと考えてたんで久々に投稿しちゃいました。
死者出せなかったの残念だけど、♀ハンター崩壊フラグ立てたり(・3・)

127 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/18(土) 08:10:13 ID:HmDus2Z.
♀ハンター食われたあああ!?
ともあれ新展開おつ&GJ。

ただ状態欄の所持品、♂騎士のツルギと♀ハンターのトーキーはwiki掲載時にでも外した方がいいかと。

128 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/20(月) 22:37:01 ID:IgZmtEWQ
スレ活性化を願って、ネタ振りー。
各人、死に際の台詞集、なんて。


♂ノビ「う、うわああああ!」
♂剣士「ひ、いぃいあ、僕は、僕、あぁぁぁ」
♂アチャ(台詞無し)
♂マジ「う・・・・・・」
♂アコ「お前が、お前がジルタスさんをぉぉぉぉおおおおおおおおオオオオオオ怨怨怨怨怨!!!!」
♂商人「げ、やべ」
♂クルセ「まったく。神はどこまでも、俺につめたいらしい」
♂ハンター「…………」
バード「なんでゲスかこりゃあ」
♂WIZ ――ここで死ぬわけにはいかないのです、まだ私は…彼女を…!
♂BS「ああ…。そういやまだもらった箱開けてなかったな」
♂ケミ「♂騎士……俺、は……」
♂アサシン「ぐあぁ・・」
♂ローグ「・・・・・・あ?」

♀ノビ(死の際の台詞無し)
♀スパノビ「……あは……だめな…おねえちゃん…です……ね………バイバイ」
♀剣士「がぁああああああ!!!!」
♀アチャ「あ、あぁ……王子さ、ま……」
♀シーフ「死んだよねぇ…」
♀クルセ(ごめんなさい、私は、あなたを守れなかった――)
ダンサー「くっ」
♀セージ「居たのなら返事くらいしな───」
♀プリ「なん…で…? こんな……」
♀モンク「───!!───」
♀BS「ま……あたいにできるのは、あいつがこっちに来ちまわないよう祈っとくことだけさね」
♀アサシン「なっ……」
♀ローグ「あ、あの、これと、武器を、交換してほしいな〜なんて…」

案内要員「あのっ、災難ですよね。こんな…」
グラリス「それは、たのもしいですわね」
ホルグレン(死の際の台詞無し)
ジルタス『ご主人様を救ってくれてありがとう。早とちりしてごめんなさいね……』
ミストレス「愉しかったが、やはり少々口惜しいからの。置き土産をさせてもらうぞえ」
忍者「行くんだああぁぁっ!!」
工務大臣「死に、じにだくないよ――」


ありありと甦る名場面・・・・・・なんてほどでもないですが。
やっぱり、バードと♂クルセの死に様は格好良すぎますわー!

129 名前:sage 投稿日:2007/08/21(火) 20:55:25 ID:0gHhT9pQ
個人的には忍者の最後に一票
次点に♀スパノビ

…しかし悪ケミってなんだかんだでしたぼくに恵まれてるなぁw

130 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/22(水) 11:35:32 ID:R7cawpOQ
序盤に死んだキャラはうっかり忘れてて久しぶりに思い出した

131 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/23(木) 09:37:54 ID:vJx6oArQ
埋め用にアナザー話書いてたら前スレ落ちてたwwwwwwwwwwwww
活性化祈願をしつつリサイクル投下

another 死亡遊戯

「…死して尚、貴方と顔を合わせる事になるとは。…なんとも皮肉な運命ですわね」
最初に口を開いたのはグラリスだった。
野暮ったい眼鏡に隠された視線の先には、鋼の様な筋肉の鎧に身を固めた無骨な神の信徒の姿がある。
「…そうだな。俺も、お前も、神に相当嫌われているらしい」
♂クルセイダーは思いの外穏やかな口調で返す。
軽く笑みを浮かべ応えるグラリスの外観からは百戦錬磨の凄みなど微塵も感じられない。

「…貴方との決着もうやむやになってしまいましたわね。まぁ腕を切り飛ばされた時点で、私の負けでしょうけどね」
「どうかな…。言い訳するつもりも慰めるつもりでも無いが、お互い手負いだった。万全の体勢ならどう転ぶか判らなかったろうさ」
軽く肩をすくめる♂クルセイダー。グラリスは「そうならいいのですけどね…」と苦笑混じりに呟く。
ゆっくりと、視線を合わせる。
傷も疲労も今はない。
万全の体勢…正に今がその時である。
絡み合う視線に、静かに、静かに…闘志が籠もる。

「…やるか?」
「…別に貴方に対して怨みも怒りもありません。ですが、私個人の要望として貴方とは戦ってみたいですわね」
「同感だ。禍根もしがらみも無く、只、己の死力を尽くしてお前とやってみたい」
♂クルセイダーは腰に下げたシミターの柄に手をかけ、そしてゆっくりと抜き放つ。
湾曲した薄い鋼。切り裂く事に重点を置いた刃が濡れたような光をたたえている。
対するグラリスは、その手にしたバスタードソードの重さを確かめるように一振り、二振りと剣閃を走らせる。
切る事よりも叩き割る事に比重を持たせた肉厚の刃が、鈍い風切り音を奏でる。

「元軍属、現カプラ職員、グラリス。参ります!」
まるで騎士の様に眼前に剣を掲げ、覇気の籠もった声を上げるグラリス。
「俺は……いや、名乗りを上げるほどの者じゃない。只の…殺人者だ」
「知っていますよ。BR優勝経験者…お手並み拝見ですわっ!」
叫ぶと同時に、一挙動で間合いを詰めるグラリス。
速い。
瞬き一つの間に距離を詰め、勢いのまま剣を振り下ろす。
十二分に体重の乗った一撃はシミターの刀身では受けられない。
が、♂クルセイダーは湾曲したその形状をフルに利用し、刃の上を滑らせるようにグラリスの一撃を受け流す。
渾身の一撃が逸らされ体の流れたグラリスの喉元に、吸い込まれるように白刃が跳ね上がる。
「くっ!」
無理矢理に首を曲げて、その斬撃から逃れる。
頬を浅く掠めたシミターが一条の紅い線を刻む。
そして二撃目の斬撃。
♂クルセイダーはその技量に物をいわせ、跳ね上げた軌跡をなぞるように刃を振り下ろす。
体勢を崩したままのグラリスだが、その瞳はしっかりと斬撃のコースを捉えている。
足首を返して、体を数センチ、外に逃がす。
頚椎を狙って振り下ろされたシミターの切先は、亜麻色の髪を一房持っていくに留まった。

トンッと軽く地面を蹴り、間合いから離脱するグラリス。
♂クルセイダーも無理な追撃はしない。
「流石…と言わせて頂きましょう。初撃を受け流した技量。流れるような反撃。…そして何より躊躇無く急所を狙う合理的な戦法。どれを取っても超一流ですわ」
「殺ったと思ったんだがな。あのタイミングで二回とも避けるか。とんでもない身体能力だな…やれやれ、手負いでなければ判らなかった…か」
どちらともなく笑みを浮かべる。
目の前の相手は、強い。
自らの全てを賭してもまだ足りないほどに。

「…そうだ」
♂クルセイダーが思い出したように声をあげる。
「お前の護りたい者の名をまだ聞いていなかったな…。今更、俺の祈りに意味があるか判らないが…良かったら教えてくれないか?」
グラリスは顔に掛かった髪を肩越しに背後へ払いながらニコッと笑う。
「W…ですわ。まだまだ目の離せないお子様ですけど…私には大事な大事な家族ですわ」
「ならば、祈ろう。神よ…Wの行く先に光多からん事を…」
「ええ…光多からん事を…」
目を閉じ、短い祝詞をあげる♂クルセイダー。
それに倣い、祝詞を復唱するグラリス。
小さな小さな祈りだった。
そして世界で一番尊い祈りでもある。

「…神は最後に少しだけ慈悲を与えてくれたらしい。最後にお前の大切な家族の為に祈る事が出来た」
「では貴方に祈ってもらえたのも神の御慈悲になるのかしら…ずいぶんと出し惜しみする神様ですわね」
「違いない」
ふふ…と声に出して笑う二人。
笑みを浮かべたまま…己が手にした武器を構え腰を沈める。
引き絞られた弓の弦のように、全身のバネを瞬発力へと変換していく…。
「では…行くぞ!」
「…ええ!」
『はあああぁぁぁっっっ!!!』

戦いはまだ、続いていく。

◇◇◇

おまけ

「は〜〜ぁ…グラリス先輩も相変わらずとゆーか何とゆーか」
「こっち来て、すぐに死闘を繰り広げちゃってるからねぇ。どうする?テーリングちゃん」
「どうするって言ってもねぇ…あの世だよ全員集合インタビューなんてできる雰囲気じゃないしなぁ…」
「近付こうものなら頭カチ割られちゃいそうだしねぇ…」
「と言っても話が進まないわ…ソリン頑張ってね」
「それは断固NOですわ」
「こーいう時頑張らないと目立てないよ?ただでさえ地味キャラなんだから」
「こういうのは脳筋バカのテーリングちゃんの仕事でしょ」

………プチ

「別に貴方に対して怨みも怒りもありまくりだからココで死ねソリンーーーーーーーーーー!!!」
「同感だーーーーーーーー!!!」

132 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/30(木) 10:51:20 ID:awei8.X6
wikiの本編だけ追加
NGと番外は九冊目が確認出来ないので追加してませぬ

133 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/30(木) 14:54:26 ID:H2yrwbwA
仕事お疲れ様ですー。
書き手さんも作品投下おいしく頂きました(*´ヮ`)
活気出ないかなぁ、ここももっと・・・。

134 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/08/31(金) 10:23:38 ID:guyZOC3w
18禁系以外はどこも過疎ってるからなぁ…

135 名前:SiteMaster ★ 投稿日:2007/09/01(土) 01:14:39 ID:???
>>132
すみません、過去ログ倉庫にアップしました。

136 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/03(月) 14:36:55 ID:.PMHHPE6
>>135
SM様ご苦労様です。
九冊目アップに伴い、NG・番外を追加。

137 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/08(土) 06:49:22 ID:j/3KzxDg
272.悪いやつら【3日目午前】


おーおー、おうおー、おおー

地の底に響く亡者のうめきのような。
枯れ木の枝をすり抜ける冷たい風のような。
遠く 深く 悲しげな声。

世界は暗い赤に燃え。
大地を踏み締める感覚はない。

悪夢か。
それともこれは地獄で。
自分は死んだのか。

おおおー、うおー

亡者の声が新たな仲間を迎える暗い喜びの声と化し。
お前も死んだと呼びかける。
賭けに負けて死んだのだと。

――?

何かが心に差し込んだ。
賭け。
そうだ。
命を張った賭けをした。

記憶が少しだけ戻る。
途端に脇腹が、ずくん、とうずいた。
痛み。
痛みがある。
夢でもあの世でもない。

生きている。
つまり、賭けに勝ったのだろうか?
わからない。
確かめなくては。いま、すぐ。

*****

「お目覚めのようですね」
彼女がゆっくり目を開けるとすぐに男の声がした。
視線をめぐらせ、声の主を探す。
慌てる必要はない。『敵』ではないはずだ。
「ええ、なんとか…」
意図しなくてもしおらしい声が自然に出る。
もっともどのみち体力を失っており細い声しか出なかったが。
だがそれは予想外の結果を招いた。
「そ。よかった」
ややつんけんした声とともに少女の顔が視界の中にぬっと突き出される。
思わずのけぞり、起こそうとしていた頭を地面に叩きつけてしまった。
「いたっ」
「おやおや。大丈夫ですか?」
最初の声が苦笑含みに気遣う。
「は、はい…あうっ」
答えて上体を持ち上げ、顔をしかめる。
腹筋に力を入れると脇腹に激痛が走った。
「無理しない方がいいですよ。かろうじて内臓はそれたようですが貫通していましたからね」
「貫通…」
反射的に脇腹をなでた手がぞっとするような凹みに触れた。
当てられた布越しでもピリッとした痛みが走る。
ただ、そこに血の湿り気は感じない。
少なくとも表面の傷はふさがっているようだ。
「誰に…?」
呆然とした口調でつぶやいた。
これも策の内。
まずは反応を見る。
それ次第では怪我で記憶が混乱している振りをするつもりだった。
少々あざといが追求をかわすには手っ取り早い。
ところが思惑はあっさり外された。
「治したのは淫徒プリさんですよ」
どこかのほほんとした男の声が、『誰にやられたか』ではなく『誰に治療されたか』を答える。
質問の意味を取り違えただけにも聞こえるが、まさか意図的にやっているのだろうか。
だとすればとんでもなく面倒な男だ。
それでももう一押ししてみる。
「いえ、誰にやられたのかと」
「パピヨンよ」
今度はさっき覗き込んできた少女が不機嫌そうな声で答えた。
「まさか忘れたとか言わないでしょね」
これはまずい。
どうやら思い切り敵視されている。
島に送られる前も同性にいきなり嫌われることはよくあった。
そんな場合にはこちらから話を合わせること。友好的に話のできる相手を嫌い続けることは難しい。
逆に言えば会話のできない相手と思わせたらアウトだ。
記憶喪失の振りは捨てるしかない。
「そう!パピヨンは!」
彼女は我に返ったような顔をつくって跳ね起き、上空を見回した。
その拍子に脇腹へ激痛が走るがぐっとこらえる。
「大丈夫、逃げてゆきました」
今度は予想通りの答えをよこした男に彼女は安堵の表情を向けた。
「そうですか…。あ、それではあのプリーストさんは?」
改めて最も気になることを尋ねる。
これであの男が生きていたのでは賭けは負けに等しい。
「向こうで淫徒プリさん達が様子を見てますよ」
にこやかに男が答えた。
生きてるのか。彼女の心を苦々しい気分が満たす。
ところが少女が不思議そうに言った。
「え?様子を見て…って。弔ってる、じゃないの?♂セージさん」
「そうとも言いますね」
彼――♂セージは臆面もなくうなずく。
「……そうですか。残念です」
♀ケミはかろうじて声と表情を取り繕った。
確かに弔うのも「死体の様子を見」ることかも知れないが、普通そういう言い方はしない。この男、一体どういう根性の持ち主か。
♂セージの顔をそっとうかがうが、内心はまったく読み取れなかった。
少女の方は…相変わらずだ。
「なによ」
探る視線に気付いたのか少女が胡乱な目を向けてくる。
「あ、いえ。私は♀アルケミストと言いますけどあなたは?」
「…♀商人」
少女はそう名乗ってそっぽを向いた。


「さて」
♀ケミが起き上がり、全員が名乗りあったあとで♂セージが皆を見回した。
「皆さんにいくつかお尋ねしたいことが――」
その言葉に重なって遠くから叫び声が響く。
『嫌ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!!!』
「えっ?」
「悲鳴!?」
一同は揃って立ち上がる。
「誰の声だった?」
「わかんない。でも女の人だと思う」
「確かに」
彼らは慌しく視線を交わしてお互いの表情を探った。
成り行きでともにパピヨンと戦ったとはいえ、まだ性格や考え方まで深く知っているわけではない。
相手はこういう場合にどう行動するのか。それを見極めるのが今後のため重要になる。
それに♀ケミや彼女の話を疑っている♀マジとグラサンモンクにとってはさらなる問題があった。
女の声であれば問題の♀ハンターである可能性がかなり高い。
だが
「何やってるの?早く助けに行かないと!」
「うん。そうだよねっ!」
良くも悪くも素直な♀商人と熱血一直線な♀アコが今にも走り出しそうな様子を見せた。
その首根っこをいち早くつかみ止め、♂セージはどこかのんびりとたしなめる。
「まあ10秒だけ待ってください」
「そんなこと言うとカウントしちゃうわよ」
悪ケミにつっこまれても軽く笑って流し、彼は自分の意見を述べだした。
「助けに行くにしても全員で行くのは論外、まだ充分に動けない方がおられるので時間が掛かり過ぎます。また怪我人だけ置いて行くのも危険すぎるでしょう」
「まあその通りだな」
グラサンモンクは慎重に同意した。
怪我人を理由に救助を諦めろと言うつもりだろうか。だとすれば冷静ではあるが人として信頼はしにくい。
サングラスの奥では♂セージをじっと品定めする。
その視線に気付いてか否か。♂セージは淡々と続けた。
「それからグラサンモンクさんと♀アコライトさんは先の戦闘と治療でほぼ精神力を使い切ったと思います。淫徒プリさんもですが、回復力が違うので多少ましでしょう」
「ええ。でも全員に支援をかける余裕はありませんよ」
今度は淫徒プリがうなずきつつ牽制する。
♀Wizの時と同様に今回も精神力を完全には使い果たさず、ヒール1・2回分の余力は残してあった。
だがあくまでも緊急用であって全員分にはとても足りない。
「速度増加は何人にかけられますか?」
「2人…でしょうか。ヒールする余地を考えなければ、ですけど」
「なるほど。では提案です。私とそちらのモンクさんに速度を掛けてもらい、2人で様子を見に行くのはどうでしょうか」
「えー」
「ひとのしたぼくを勝手に使わないで」
行く気満々だった♀アコと『したぼく2号』を連れて行かれそうになった悪ケミが抗議の声を上げる。が、他の面々はそれぞれうなずいた。
「ま、2人だけ選ぶならそれが一番だよね」
と♀マジは納得顔。
彼女や♀アコに可能なことは♂セージとグラサンモンクにもできる。
商人系は瞬間的な破壊力はともかく、偵察に向いているとは言えない。
ヒールやさまざまな支援スキルを持つ淫徒プリは通常なら適任なのだが、充分な精神力がない今は行っても危険が増えるだけだろう。
そして悪ケミはといえば
「したぼくをしばらくお借りしていいですか?」
「しょーがないわねっ。貸してあげるから利子つけて返すのよっ」
♂セージに頭を下げられ、あっさり許可してしまった。
自分しか反対がいなくなった様子を見て♀アコもすぐに諦める。
一刻を争うときに我を張るほど馬鹿ではない。
「わかった。急いで行ってあげて」
「では…速度増加!」
全員の同意を受けて淫徒プリが魔法を掛け、即座にセージとグラサンモンクは駆け出した。

138 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/08(土) 06:49:32 ID:j/3KzxDg
<♂プリースト>
現在地:E-6
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 多めの食料 マイトスタッフ
外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔
備考:殴りプリ
状態:不明

<♀アルケミスト>
現在地:E-6
所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) クロスボウ 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 寄生虫の卵入り保存食×2
外 見:絶世の美女
性 格:策略家
備 考:製薬型 悪女 ♂スパノビ・悪ケミらと同行 首輪や地図の秘密を知り悪だくみ中 淫徒プリと再会
状 態:脇腹に貫通創(治療済)

<♂スパノビ>
現在地:E-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖
スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒
外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い
備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている ♀ケミ・悪ケミらと同行 仲間を見つけた?
状 態:HPレッドゾーン・ヒールでやや回復 気絶中

<悪ケミ>
現在地:E-6
所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 支給品一式 馬牌×1
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
思 考:脱出する。
備 考:サバイバル、危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミを信用?
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<♀アコライト&子犬>
現在地:E-6
容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミを信用?
状 態:デビルチとの戦闘で多少の傷 SPほぼ枯渇

<♀マジ>
現在位置:E-6
所持品:真理の目隠し とんがり帽子
容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート)
備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。
   首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミに疑念 レズ疑惑
状 態:足に軽い捻挫、歩くには問題無し

<グラサンモンク>
現在地:E-6
所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス 種別不明鞭
容 姿:csm:4r0l6010i2
スキル:ヒール 気功 白刃取り 気奪 指弾 発勁 金剛 阿修羅覇王拳
備 考:特別枠 右心臓 したぼく二号 悪ケミを護る ♀ケミに疑念 デビルチ・♀ハンターを警戒 ♂セージと悲鳴の方向へ
状 態:掌と肩に打撲 SPほぼ枯渇
参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】
作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)

<♂セージ>
現在地:E-6
所持品:ソードブレイカー 島の秘密を書いた聖書 口紅
容 姿:マジデフォ黒髪
スキル:ファイアーボルト ファイアーボール ファイアーウォール ナパームビート ソウルストライク フロストダイバー
備 考:FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? GMジョーカーの弟疑惑
    グラサンモンクと悲鳴の方向へ

<♀商人>
現在地:E-6
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
    淫徒プリ・悪ケミらと同行 ♂プリとの再会だが・・・

<淫徒プリ>
現在地:E-6
所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱
容 姿:女性プリーストの姿(csf:4h0l0b2) 美人
備 考:策略家。Int>Dexの支援型 ♀WIZに話したことで少し楽になる
    ♀商人・悪ケミらと同行 ♀ケミを警戒
状 態:SPほぼ枯渇

<残り16名>

139 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 03:03:21 ID:E4swxibU
眠い目こすって、書き込んでみます。誤字脱字あったらごめんなさい。

273 狂気の代償


彼は普段使われていない通路の奥から聞こえた物音を頼りに、ここに来た。
薄暗い通路を進んでいくと、以前のBRにより使えなくなった家具の物陰から、
なにやら打音が聞こえてくる。彼は持ち前の豪胆さでズンズンと進んでいく。

10歩くらいで、音の主を確認できた。一人はまだ幼さが残っている少年、
もう一人は色香漂う女性だった。弟を気遣う歳の離れた姉に見えなくも無い。

(あれが地図からいなくなった♂シーフと♀WIZだな。)

「お前ら、こんな所でナニしてた?」

彼は無警戒に近寄りながら声を掛けた。足場の悪さに顔をしかめながら二人を観察する。
と、少年がくるりとこちらに顔を向けた。女性の方は視線をこちらに向け、顔を強張らせている。
女性の視線を受け、彼はそりゃそうだよなぁ、と思う。BRに参加している以上、
GMは恐怖の対象だ。直接は関与しないものの、反逆すれば開幕時の♀モンクのように、
圧倒的な力でねじ伏せられる。彼はジョーカーほどではないものの、それくらいの実力はある。

一方の少年の方を見て彼は、あ〜あ、なんて思った。おそらく顔にもその表情が出ていただろう。
なにしろ少年は彼の方を見て、とびっきりの笑顔を浮かべたのだ。少年が精神的に壊れてしまった、
と思っても仕方ないことだ。正常な反応を示した♀WIZのみに意識が向いた。

「もう一度聞くぜ?お前ら、こんな所でナニしてた?」

彼、GM森は言い終わった後、一歩踏み込んだ。♀WIZは杖を両手で構え、一歩後退する。
驚愕に見開いていた瞳は、今では敵意と殺意に満ちている。

「やれやれ、こんな美人にそんな睨まれるとはねぇ、因果な商売だな。」

GM森は♀WIZをじっくりと舐める様に観察した。♀WIZはその好奇な視線を避けるように、
杖を構えなおす。だからなのかGM森と♀WIZは視界に入っているはずの♂シーフの行動に、
付いていけなかった。♂シーフはただ狂気に満ちた笑顔でGM森を見ていたのではない。
GM森が現れる前に♀WIZに対して考えていたように、戦闘方法を考えていたのだ。
狂気に犯されながら、肝心なところは異常なまでに冷静である。囚人の腕輪に秘められた力だった。

♂シーフは幽鬼のようにゆらりとGM森に近づいた。が、GM森は意識しなかった。
いや、意識できなかった。元々精神が壊れたと思って意識していなかったうえに、
♀WIZに警戒していた。いくらGM森とはいえ、オーラWIZには注意ははらう。
だからこそ、一次職の壊れたシーフには例え攻撃されても問題ないと判断していた。

140 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 03:04:15 ID:E4swxibU
「なっ!!?」

驚きはどちらのものであったか。GM森と♀WIZが気が付いたときには、
♂シーフはGM森の1m手前に近づいていた。GM森があわてて剣を抜こうとしたとき、
異変に気が付いた。左の腰に差した剣が無くなっている。しかも鞘ごと無い。
♂シーフが♀WIZの方向に何かを投げた。それが自分の剣だと気が付いたがもう手遅れだった。
悪態をつく暇も無い。♂シーフのグラディウスがGM森の喉元に向かって突きこまれる。
体を左にひねってかわす。突きこんだグラディウスをそのまま避けた方向に切り払う。
GM森はこれを仰け反って凌ぐ。今度は切り払いの勢いを利用した左のハイキックがGM森の顔面に迫った。
GM森は相手の意図を読み取り背面とびで距離をとりつつ体勢を整える。本来なら♂シーフの蹴りなぞ、
避ける必要が無い。GM森は自他共に認めるマッチョだし、♂シーフは女装したら似合う位線が細い。
逆に蹴りを喰らって相手の体勢を崩すくらいのことをやってもおかしくないのだが、
つま先で目を狙われたら話は別だ。いくらGM森とはいえ、避けるしかない。

(くっ、こいつ本当にシーフか?対人に特化したローグやアサシンとしか思えねぇ。)

今更自分の浅慮さを呪っても遅い。愛剣はいまや♀WIZの手元にあるし、予備の武装は、
あまり使わないブレイドだ。最大まで鍛えてあるが、特にカードは挿しておらず、
まさしく飾りとなっていた。が、今はそんなことは言っていられない。素早く抜き放つと、
♂シーフを迎え撃つ。攻撃をかわされた♂シーフは躊躇うことなくGM森に突き進む。
これをGM森は袈裟懸けに切り払う。♂シーフはしゃがんでかわす。切り払ったブレイドを
腕力で強引に左から右へと薙ぎ払う。しゃがんだ♂シーフの胸辺りの位置を狙っている。
それをバックステップで避ける。GM森は飛んで避けた場合の切り上げを考えていたが、
開きすぎた間合いのため中止する。今度はGM森が間合いを詰める。ブレイドを上段に構え、
一気に振り下ろす。♂シーフはそれをGM森の左側に回り込んで避けようとする。その際、
GM森の脇腹をグラディウスで切り裂こうとする。それを無視してGM森はブレイドを地面に叩き付けた。

脇腹を切り裂いた♂シーフは突如発生した爆炎に吹き飛ばされた。グラディウスを放り出し、
地面に転がり動かなくなる。GM森は大振りを誘いダネとし、攻撃を喰らう覚悟で短期決戦に踏み切った。下手に長引かせれば間違いなく♀WIZの攻撃がやってくる。
予想以上に痛む脇腹を押さえ、GM森は♀WIZの方を見る。♀WIZはすでに何かの魔法を詠唱していた。
GM森は舌打ちし、♀WIZに駆け寄る。が、♂シーフにやられたダメージがその足を鈍らせる。

141 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 03:04:54 ID:E4swxibU
焦りがその一撃を鈍らせた。なんとか間合いに入り、ブレイドを一閃させる。しかし♀WIZは、
紙一重で攻撃を見切ると、そのまま攻撃に転じた。青白い雷球がGM森の体を包むと、
朽ちた家具まで一瞬で吹き飛ばす。信じられなかった。BR参加者は例外なく能力を制限させられるのに、
なぜ、この女の魔法はそのままの威力なのか。吹き飛んだ際にブレイドは手放した。
ウィザードスタッフによりさらに威力が上がったユピテルサンダーで体が痺れて思うように動けない。

「こ、こんなところで死ねるかよ・・。」

GM森は体を起こし、家具を遮蔽物にして通路から逃げようとした。自身でヒールは使えるが、
♀WIZの火力と比べると、自分の回復力は余りにも低い。幸い吹き飛ばされたおかげで、
♀WIZとの間合いはかなり開いた。この通路にくるまで、いくつもの廃棄された家具を確認しているため、
遮蔽物は事欠かない。うまくすれば、遮蔽物にまぎれて追ってきた♀WIZを仕留められるかもしれない。

だが、そんな甘い事を♀WIZが許すわけがなかった。
立ち上がり逃げようとしていたGM森の目の前に絶望という名の氷壁が立ち塞がった。
その壁は即座に背後にも出来上がる。簡易擬似ファイヤピラーである。これの対処法は唯一つ、
マグナムブレイクで氷壁の隙間を広げ、ファイヤーウォールをやり過ごすしかない。
GM森はすぐにマグナムブレイクでアイスウォール間の隙間を広げた。
そして、素手によるボーリングバッシュでアイスウォールの一部を吹き飛ばして退路を確保するつもりだった。
だが、♀WIZは動じることなく出来た隙間を埋めるようにアイスウォールを重ねてきた。
驚愕するGM森。マグナムブレイクは気を溜めて炎と衝撃に換える技、そのため連発ができない。
それを見越してのアイスウォール。♂WIZに一度破られた教訓を活かさないはずが無い。
そして、足元から吹き出る炎。

「ウオオオオオオオオォォォォォォォ・・・・・。」

氷の壁の中から絶叫が聞こえる。が、それも長くは続かなかった。
♀WIZは氷壁の中で、GM森が崩れ落ちるのを確認してから♂シーフに駆け寄った。

142 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 03:05:19 ID:E4swxibU
「♂シーフ君、しっかりして!!」

♀WIZは♂シーフの体を抱き上げながら言う。♂シーフの傷の状態が良く分る。
左腕と左足は炭化しかけてる。吹き飛ばされた衝撃で右腕は間接が一つ増えたようになっている。
頭部からは今も血が流れている。♀WIZの呼びかけに目を開けたことが奇跡に近かった。

「♀WIZさんは・・、無事ですか・・・?」

「私は大丈夫、♂シーフ君が頑張ってくれたから傷一つ無いわ。」

「・・・そうですか・・・、よかった・・・・。」

消え入る声、♀WIZは♂シーフの体を強く抱きしめる。

「あぁ・・・、あの嫌な声も聞こえない・・・。これならゆっくり休める・・・。」

「♂シーフ君、しっかりして!♂シーフ君っ!!」

♀WIZの目に涙が浮かぶ。♂シーフの体から熱がどんどん失われていく。

「じゃあ・・・、♀WIZさん・・・・、お休み・・・なさい・・・。」

「・・・・・。えぇ、ゆっくりお休みなさい。ぐっすり眠れるようにおまじないしてあげるから・・・。」

♀WIZはそう言って♂シーフの頬に口付けした。GM森に挑みかかった時の顔はしておらず、
歳相応の穏やかな寝顔だった。そっと♂シーフを横たえると、涙をぬぐい立ち上がった。
GM森は倒したが、この通路の奥にはもっと多くのGMがいるだろう。
そして、そのGMがGM森と同じように愚かとは思えない。

♀WIZはGM森の残骸を見下ろしながら、今後の行動を練っていた。


<♂シーフ>
現在地:謎の地下室
所持品:多目の食料 +7トリプルハリケーングラディウス 囚人の腕輪?
容 姿:栗毛
備 考:ハイディング所持 盗作ローグ志望でちょっと頭が良い ♀WIZと同行
    呪詛に苛まれるが開放される GM森との戦闘により死亡

<♀WIZ>
現在地:謎の地下室
所持品:クローキングマフラー ロザリオ(カードは刺さっていない)
    案内要員の鞄(DCカタール入り) ウィザードスタッフ GM森の愛剣
容 姿:WIZデフォの銀髪
備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 ♂シーフと同行 年の事は聞かないでね?
状 態:容態安定 ただし全身に傷跡が残る HPは半分くらい?
    希望が見えてきて気持ちが前向きになるも♂シーフと死別して不安定に

<GM森>
現在地:謎の地下室
所持品:不明
外 見:逆毛 筋肉質だった
状 態:ファイヤーウォールにて死亡

143 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 12:50:41 ID:jZ9pqtVs
さよなら森

144 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/12(水) 19:14:00 ID:xZAlwsXo
もうスティール使えるやつ生き残ってない気がした

145 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 00:08:42 ID:99xc34eQ
スティール使えるやつ消しちゃったらハッピーエンドフラグが吹き飛ぶんだが(汗)

・・あたらしいフラグをたてる必要がでてきちゃったな

146 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 00:27:26 ID:6yYKeRTo
もうジョーカーによる皆殺し展開でいいんじゃね

147 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 05:04:19 ID:lEd1ogQM
森のGM武器は♀WIZが持ってるからそれで大丈夫だと・・・・・思いたいけど(´・ω・`)

148 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 06:00:34 ID:rqbNBAhI
少なくともスティールに関してはまだ2つ可能性が残ってると思うけど?
ついでに言えば必ずしもスティールは必須じゃないと思うし。

149 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/13(木) 07:36:06 ID:lV17F/x6
この場合はこの場合で、新展開じゃないですかっ。
って、もう佳境ですが。
如何にして巧く話を進めるか、期待期待です。

150 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/14(金) 02:18:15 ID:g2NX44Vk
274.ロシアンルーレット[3日目午前]


「……」
「……」
2人が去ったあと、残った淫徒プリらの間に沈黙が落ちる。
あの叫び声は一体誰のものか。
見に行った2人は大丈夫か。
思惑が交錯する。
♀ケミは思う。悲鳴の主が♀ハンターならいい。
そのまま死んでいてくれればもっといい。
♀マジは考える。たぶんこれで♀ケミの話の真偽がはっきりする。
悲鳴の主が生きていてくれれば。
そして♀アコは思いついたことをすぐ口に出した。
「あたし達はどーしよ?」
「どうするかって、あとは侍ってるしかないでしょ」
当然のように言って悪ケミが肩をすくめる。だが♀アコは首をかしげた。
「そうかな?絶対間に合わないって決まったわけじゃないし、2人を追っかけてもいーんじゃない?」
「あ、うーん」
「キミ、時々すごく鋭いこと言うよね」
それぞれに声を上げて淫徒プリと♀マジは考えこむ。
ときどきってなによ、と♀アコが抗議するがそれは華麗にスルー。
やがて♀マジが賛成した。
「…誰か怪我してればすぐ戻ってこれないかも知れないし、追いかけた方が早く合流できるね」
だが淫徒プリは同意しかねるといった表情で首をかしげる。
「ですが皆でついていっては偵察の意味がなくなります。敵が本当に危険だった場合、強くて速度も掛かっている2人だけのほうが逃げやすいでしょう」
「でもさ、ヤバい相手とはいつか戦わなくちゃいけないでしょ?今やっても同じじゃない?」
「同じではありません。多少なりとも精神力を回復して挑みたいところです」
職業的な考え方の差だろうか。
積極策を主張する♀マジや♀アコと慎重策を主張する淫徒プリの意見が対立する。
その様子を見て♀ケミはちょっとだけ悩んだ。
彼女達に死んでもらうなら喧嘩になるよう煽るところだが、人手がこれだけあれば悪ケミの言った脱出の可能性も現実味を帯びてくる。
その可能性を今ここで消してしまうのは損ではないか。
「あの…先に♂プリーストさんの遺品を確かめてみませんか?何か役に立つものがあるかもしれませんし」
そう言って少し離れた場所に作られた土饅頭をちらりと見る。
「…ああ、そうだね」
♀マジは一瞬何か言いたそうな顔をしたが、すぐにうなずいた。
代わって淫徒プリが答える。
「でも装備は一緒に埋めてしまいましたよ」
「いえ、装備のことではなくて」
♀ケミはかぶりをふる。
せっかくの支給品を埋めるなんてもったいないとは思うが、「使える」装備を埋めてしまうほど馬鹿ではあるまい。それほどたいした物ではなかったのだろう。
それに装備を誰が持つかと言う話になれば、戦力外の彼女に回ってくる可能性は低い。
「精神力や体力を回復できるものとか、足の速くなるものを持っていないかと」
「なるほど」
淫徒プリは♂プリのものだったらしい鞄を引き寄せた。そして他の面々に鞄の中を見せる。
覗き込んだ一同はそれぞれに声を上げた。
「うわ、なにそれ」
「…干し肉?そんなにいっぱい?」
「喉が乾きそうね」
「わふ」
最後のは肉を見せられて尻尾をバタつかせた子デザである。
「食料はちょうど無くなった所ですし、これはありがたくもらいましょうか」
そう言って淫徒プリは干し肉の束を10個に分け始めた。
もっともさすがにそれだけの人数で分けると二食そこそこにしかならない。
受け取った♀アコは小首をかしげ、
「じゃああたし達のも分ける?」
鞄からペットフードを取り出した。
一瞬期待する顔を見せた悪ケミがペットフードを見て顔をしかめる。
「肉があるのにどーしてばけもののえさなんか食べなきゃいけないのよ」
「それペットフードだよ」
「わ、わかってるわよそんなことっ。直約しただけじゃない」
「直訳…かなあ?」
干し肉の束から一本選んで口にくわえ、残りを空っぽの鞄へ収めながら♀マジは首をかしげる。
同じく鞄を開けた♀ケミは、そこである物に気付いた。
(そう言えばこんなものもあったわね)
♂ローグから奪った菓子包みの状態を確かめる。
二つのうち一方はいつの間にかつぶれて泥に汚れているが、もう一方は大丈夫そうだ。
干し肉やペットフードもあったところを見ると、これも誰かに支給された食料なのだろうか。
首をかしげていると、早くも肉を一枚食べ終わった♀アコが目ざとく見つけた。
「なーにそれ?」
「たぶんお菓子だと思います」
「へー」
♀アコは身を乗り出した。
そして物欲しそうに言う。
「干し肉ばっかりだとちょっと飽きちゃうなー」
「そうですね。でも1つしかありませんし…」
♀ケミはちょっとだけ考えるポーズを見せた。
そして失望を顔に浮かべた相手に秘密めかして小声で続ける。
「今のうちに女の子だけで分けちゃいましょうか」
「やった」
柔らかめのビスケットのようなそれを♀ケミはおおまかに六等分する。
そして5人に勧めた。
空腹のときの甘いものや小さな秘密の共有は、仲を深める簡単な手段の一つである。
どうも視線の厳しい少女達を懐柔し、障害を減らしてから男性陣を篭絡しよう。とっさにそういう計算をしていた。
「なにこれ?」
「デザートです」
不審そうな♀マジへいたずらっぽく笑って見せ、さっそく手に取った♀アコと共に一片を口に入れようとする。
「待ってください」
淫徒プリがそれを止めた。そして♀ケミにたずねる。
「これの効果は?食べてみましたか?」
「効果、ですか?」
淫徒プリの質問に♀ケミは首をかしげた。
食べてみたことなどないのに分かるはずがない。
ちょっと困った様子の彼女を観察しながら淫徒プリは説明した。
「お菓子の中には茶菓子のように集中力を高められるものや、チョコレート類のように精神力を回復できるものがありますよね」
「あ、そんなんだったらいいね」
つかまれていた手を振り払って♀アコは手元の一片を眺める。
淫徒プリは思慮深げにうなずきながら続けた。
「もしそういった効果があるなら食べずにとっておくべきではないでしょうか」
もちろん真意はやや異なる。♀ケミの差し出した食料を怪しみ、とりあえず食べずに済むよう理由をこじつけたのだ。
一方の♀ケミはどう答えるか少しだけ迷った。
だが嘘をついても食べればすぐに分かってしまうことだ。ここはある程度事実に沿って答えるしかない。
「私も食べてみたことはないんです。特別な物かも知れないなんて考えませんでした」
「ふーん。ってことは箱から?」
「はい」
♂ローグを殺して奪ったとは答えにくいのでそこだけ嘘をつく。
「効果について何か説明のようなものは?」
「ありませんでした」
「それじゃ食べてみないと分からないよ?」
「そうですね」
♀アコの言葉ににっこりと笑い、淫徒プリは♀ケミに対する攻撃のカードを切った。
「ですからまず、ひとかけらだけ食べてみて効果を確かめておくべきでしょう」
「誰が食べるの?」
よだれを垂らさんばかりの顔で♀アコがたずねる。
淫徒プリはしれっと答えた。
「ここは当然持ち主の♀ケミさんにお願いしましょう」
もし彼女が毒を仕込んでいればこれで困るはずだ。
淫徒プリは♀ケミの反応を慎重にうかがった。
だが、そこには毛ほどの動揺も見られない。
「ではお言葉に甘えて」
「あ、待ってください」
まだ疑いを解いていない淫徒プリはさらにもう一押し。
「私の分の方が小さい気がするのでこちらを。なるべく多く残したいですし」
「はあ」
♀ケミの分だけ毒が入ってない可能性もある。そう考えて交換を要求したのだが、彼女は多少困惑した様子を見せただけだった。
それもそのはず、♀ケミは毒が入っている可能性に思い至っていなかった。
これまで他人を陥れることはあっても自分が仕掛けられる側に回ることなどなかったせいだろう。
「それではお先に」
どうも警戒されてるらしいと感じながらも、今度ばかりは何もしていない♀ケミは返してもらった欠片をあっさり口にした。

151 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/14(金) 02:18:38 ID:g2NX44Vk
「…どう?」
まるで恐れる様子もなく菓子を食べた彼女に♀マジが恐る恐る声を掛ける。
「格別おいしいと言うほどではないですね。堅パンみたいで」
「味より効果が聞きたいのですけど」
淫徒プリも考えすぎだったのかと少しだけ安心し、意識を次の問題に切り替えた。
問われた♀ケミは微妙な表情をする。
「特に感覚が鋭くなったとか元気が出たと言う感じは…」
「精神力は?」
「特に使っていませんからわかりません」
「ああ、そうだよね」
♀マジは手元の菓子片を見下ろす。
「ボク達が食べてみるしかないか」
それでもまだ完全に信用し切れない彼女の横で、♀アコが口をもぐもぐさせながら嬉しそうに言った。
「結構おいしいよ?」
「ってキミどうして食べてるんだよっ」
「あたしも魔法使い切ったし。回復するならいーじゃない」
当然のように言われて♀マジは頭を抱える。だがこうなったら仕方ない。
「で、どう?ちょっとは回復した?」
ため息混じりに聞かれて♀アコは首を振る。
「よくわかんない」
「ああもう、まったく」
♀マジは腹立ち紛れに自分の分を口に入れた。
そしてゆっくり吟味しながら味わう。
確かに菓子と呼ぶには素っ気のないしろものだが、かすかに塩気と甘みがあって、おいしいと言った♀アコの気持ちも分かる。
しかしそれだけだ。
「うーん?わかんないね」
「回復剤でもないということでしょうか。何の意味があるのでしょう?」
♀ケミから改めて一片を受け取った淫徒プリが首をかしげる。
すると悪ケミが分析結果を告げた。いつの間にか細かく分解しながら食べていたらしい。
「小麦粉のほかにもいくつか、穀物とかハーブ使ってるわね。なんかどっかのけんこー食品みたい」
それを聞いて♀マジがうなずく。
「そっか、あくまでも食料なのかもね。これ1つ食べれば丸一日飲まず食わずで平気だとか」
「ありそうな話です」
淫徒プリもこれだけ他の面々が食べては自分だけ無視もできず、手元の欠片を口に運ぶ。
ずっと黙って話を聞いていた♀商人も皆の顔を見回してから菓子片を食べ――
「う、ううっ!?」
次の瞬間、腹を押さえてカートごとひっくり返った。


<♂プリースト>
現在地:E-6
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 食料二食 マイトスタッフ
外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔
備考:殴りプリ
状態:不明

<♀アルケミスト>
現在地:E-6
所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) クロスボウ 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食
外 見:絶世の美女
性 格:策略家
備 考:製薬型 悪女 ♂スパノビ・悪ケミらと同行 首輪や地図の秘密を知り悪だくみ中 淫徒プリと再会
状 態:脇腹に貫通創(治療済)

<♂スパノビ>
現在地:E-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 食料二食
スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒
外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い
備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている ♀ケミ・悪ケミらと同行 仲間を見つけた?
状 態:HPレッドゾーン・ヒールでやや回復 気絶中

<悪ケミ>
現在地:E-6
所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 支給品一式 馬牌×1 食料二食
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
思 考:脱出する。
備 考:サバイバル、危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミを信用?
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<♀アコライト&子犬>
現在地:E-6
容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい 食料二食
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミを信用?
状 態:デビルチとの戦闘で多少の傷

<♀マジ>
現在位置:E-6
所持品:真理の目隠し とんがり帽子 食料二食
容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート)
備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。
   首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミに疑念 レズ疑惑
状 態:足に軽い捻挫、普通に歩くのは問題無し

<♀商人>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
    淫徒プリ・悪ケミらと同行 ♂プリとの再会だが・・・

<淫徒プリ>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱 食料六食
容 姿:女性プリーストの姿(csf:4h0l0b2) 美人
備 考:策略家。Int>Dexの支援型 ♀WIZに話したことで少し楽になる
    ♀商人・悪ケミらと同行 ♀ケミを警戒

152 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/17(月) 11:06:43 ID:cBld2QaE
275.魔なるものの邂逅[三日目午前]


「あーもーっばかばかばかばかばかうまのけつーっ!絶対絶対ぜえぇーったい許さないんだからっ!」
誰の声も届かない空の上でパピヨンは器用に地団太を踏んでいた。
圧倒的多数を相手にしてとはいえ、勝負を挑んで撃退されたことがよほど気に入らなかったらしい。
「今度会ったらぎったんぎったんのぐっちょんっぐっちょんのけちょんけちょんにして、もんのすごぉーっく恥ずかしいイタズラ書きしてやるーっ!お・ぼ・え・て・ろーっ!」
両手を突き上げ、ひとしきり吠えるだけ吠えた彼女はやがて急にがっくりうなだれた。
引き締まった腹を押さえて情けない声を出す。
「それにしても・・・おなか減ったなあ」
心なしか触角も力を失って垂れ下がっているようだった。
「どっかにご飯落ちてないかなー。今ならむさい男でも死体でも我慢するのになー。若くて元気な子の生き血がいーなー」
ふらふら飛びながら一貫性のないことをつぶやく。
その目がふと細められた。
「あれ?なんだろ、食べれるかな?」
ちょっと遠くの地面に動くものを見つけたパピヨンは小首をかしげる。
ただし迷っている時間は短かった。
「まいっかー。試してみれば分かるよね」


地上をトテトテ歩くそいつはときどき立ち止まり、周囲を見回していた。
だが頭上はまったく警戒してなかったらしい。
物音ひとつ立てずに滑空で忍び寄るパピヨンにはまるで気付かず、
「フぎょっ!?」
いきなり脳天めがけて落下すると奇妙な悲鳴を上げて動かなくなった。
「よ〜っし、かんぺき」
みごとなまでの座布団状態にした相手を確かめてパピヨンは自画自賛する。
息はあるしどうやら大した外傷もない。ダメージよりはショックのあまり気絶しただけのようだ。
これなら新鮮な生き血を心ゆくまで楽しめる。
「いっただっきま〜す」
彼女は実にうれしそうに手を合わせ、口をつけた。
かぷ
そのまま一秒、二秒・・・
「ぅホわじャー!?ナニするカ貴様ーっ!」
「うえーっ、ぺっぺっぺ!まっずーいっ!」
双方同時に悲鳴を上げて跳び離れた。
「ヒトの血を勝手ニ吸うテおいて何ヲ言うかっ」
目を覚ました黒くて小柄な生き物は地面を叩いて抗議する。
もっともな言い分だが、パピヨンはまるで取り合わずに憮然とした声を出した。
「人間の血じゃなかったー」
「当タり前だ。我はデびルチ、悪魔なのダからな」
デビルチと名乗ったその生き物は自慢げに胸を張る。
ところがパピヨンはきょとんとするばかりで驚くそぶりも見せない。
「悪魔ってなーに?」
「知らヌのか。悪魔トは魔界に住む最強ノ種族のコとダ」
デビルチはさらにそっくり返る。
だがパピヨンの答えはにべもなかった。
「うそだー」
「ナにガ嘘か」
真っ向から否定されてデビルチは不満そうにする。
パピヨンは当たり前のように答えた。
「黒塗り毒まんじゅーなんかより虫のほーが強いもん」
「誰がドク饅頭ダっ!無駄のナい完成さレたボディと言ワぬか!」
ひどい言われようにデビルチの頭の噛み傷から黒い血が噴き出す。
「えー。丸ければいいんだったらダンゴ虫が一番えらいことになるじゃなーい」
クスクス笑われてデビルチはついに身構えた。
「よカろう。ナらバ悪魔の強サを思い知るがイい」
「へー。やってみればー?」
パピヨンは鼻で笑ってふわりと浮かび上がる。

相手が手の届かないところへ逃げたのを見てデビルチは即座に詠唱を始めた。
雷球が徐々に形成されてゆく。だがそのペースは人間の魔術師に比べても早いとはいえない。
のんびり眺めていたパピヨンはその完成直前に赤い魔力球を生み出す。
「おっそ〜い」
殺到したSSは身動きの取れないデビルチに一発残らず命中し、
――消滅した。
「あれ?」
呆然とするパピヨン。
その隙にデビルチの雷が完成する。
「食らエ」
「ふーんだ。効かないもーん」
バヂバヂバヂッ
パピヨンは片手を突き出してJTを受け止めた。
その反動でさらに上空へ跳ね上げられ、そのままの位置で滞空する。
「・・・ぬウ。思っタよりやルではナいか」
「・・・ふっふ〜ん。おどろいた〜?」
お互いに余裕ぶって相手の様子をうかがうが、その声には隠し切れない動揺がにじんだ。

デビルチはど肝を抜かれていた。
普通、JTを素手で受け止めたりはしない。
たとえダメージは小さくても腕が痺れてしばらく使えなくなる恐れがあるからだ。
それを恐れないということは、当たったように見えたJTも実は効いていないのか。
まして相手は空中。
あっちの魔法も効かなかったとは言え、石でも投げられれば手も足も出ない。
パピヨンも少なからず困惑していた。
彼女は生まれ持った能力を本能的に駆使することで歴戦の冒険者とも対等以上に渡り合ってきた。
しかしその一方、知識と経験は決定的に不足していた。
そのためデビルチの体とJTが闇の属性を持つとは知らず、JTなら自分には効かないと本能的に考えてしまった。
それが小なりとはいえダメージを受け、しかも自分のSSは効いた様子がない。
こんな相手とどう戦えばいいのか。

やがてデビルチが槍を下ろした。
「・・・やメよウ。これ以上やりアってモお互い意味あるまイ」
「負けをみとめるのー?」
「引キ分けにせヌかと言ってオるノだ!」
「ふーん?まいっかー。やっつけても食べれないんじゃ疲れるだけ損だしー」
一瞬だけ考えたパピヨンは羽をたたんで降下する。
そしてそのままデビルチの目前にぺたんと座り込むなり駄々をこねた。
「おーなーかーすーいーたー。なんか食べ物もってなーいー?」
「さっキ集めた若芽ならバ少し残っテおるゾ」
デビルチが差し出した樹の新芽にパピヨンは首を振る。
「そんな力の入りそーにないものじゃなくてー。人の血とかー、家畜の血とかー」
「蝶のクせに蜜デはないのカ?」
遠い同族の好物を思い出してたずねるとパピヨンは目を輝かせた。
「持ってるの?今ならハチミツでもローヤルゼリーでも我慢するよ」
デビルチは首を振る。
「贅沢言うナ。持っとラん」
「なーんだ。期待しちゃったじゃないー」
「ふむ?」
つまらなそうに頬を膨らませるパピヨンを見上げ、デビルチは何やら首をひねった。
そしてちょいちょい、と手招きする。
「モノは相談ダが」
「なーにー?」
ぶーたれた顔のままやる気なさそーに答えるパピヨン。
それでもデビルチはくじけず提案した。
「我ト手を組マぬか」
一瞬の間があってパピヨンは座りなおし、デビルチの顔をまじまじと覗き込んだ。
「一緒にやろってこと?なんで?」
デビルチは考えておいた理由を口にする。
「我の知ル限り、この島にオる人間たチは集団で行動しテいる者ガ多い。一対一ならバともかク、多数を相手にスるのハ危険であロう」
その多数相手に散々な目にあったばかりのパピヨンは思わずうなずきかけ、すぐに強気をとりつくろった。
「んー。そんなこともないけどー」
デビルチは気付かないふりをして説得を続ける。
「少なクとモ我々の利害は対立セぬ。お主ハ好きなだケ血を飲メばよイ。我は魂ヲもらう」
するとなぜか急にパピヨンが顔をしかめた。
「なんかだまされてる気がするー」
「どこガだ?」
デビルチの目が泳ぐ。
1人では戦う自信がないのは主にデビルチの事情だ。相手の力を頼りにする度合いが違う。
だがパピヨンが疑いを挟んだのはそこではなかった。
「もしかして魂ってすっごくおいしいんじゃないのー」
「アほカっ」
デビルチは思わず全力でつっこんだ。
「食っタりはせヌ。我ら悪魔にトっテは人の魂を持つコとに価値があるノだ」
「どーゆーこと?」
どうやら本当に分からないらしい。
デビルチはちょっと考えて分かりやすそうな例えをひねりだした。
「人にトっての宝石のヨうなものかナ。よリ強く純粋な魂ホど価値がアる」
するとパピヨンはあっさり興味を失った。
「なーんだ。食べれないならいーやー。魂はあげるー」
「・・・そレは手を組ムといウ意味に取ってイいノか?」
確認するデビルチにパピヨンは無邪気な笑顔を向けた。
「うん。頑張っていーっぱいやっつけよー!」


<パピヨン>
現在地:E-7
備 考:ミストレスの魔力を一部受け継ぐ ノーマルより強い デビルチと同行
状 態:あちこちに軽症 撃退されてご立腹中?

<デビルチ>
位 置:E-7
所持品:+10スティックキャンディ トライデント(デビルチ用)
備 考:悪魔 パピヨンと同行

153 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/19(水) 22:24:58 ID:LhO1G/mg
暫く見ない間になんか投下がたくさん来てる
どの書き手もGJ

154 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/20(木) 09:03:35 ID:9B2KGO5g
276. 嘘 [3日目午前]


♀商人は激しくえずき、背を丸めて全身を震わせた。
「どうしたんですか!?」
「どいてっ」
驚く♀ケミを半ば突き飛ばすようにして淫徒プリが少女の傍らに膝をつき、丸まった体を無理矢理引き起こす。
「吐いて!早く!」
そう言って少女の顔をのけぞらせると有無を言わせず喉に指を突っ込んだ。
さらにみぞおちへ膝を当てて強く押す。
「ぇうっ、うぶぇえええぇぇぇっ」
少女の口から食べたものと胃液があふれ出した。
さらに彼女の口に水筒を押し付けて強引に水を流し込み、もう一度吐かせる。
毒物に対する素早い処置。
♀ケミへの疑いを完全には捨てていなかったからこその反応だろう。
次いで自分も吐こうとする様子を一瞬見せるが途中でやめる。
食べた順序と時間経過からして、同じ毒が入っていたならとっくに効果が出ていなければおかしい。
代わりに淫徒プリは周囲に問いかけた。
「緑ポーションかそれに類するもの、ありませんか!?」
即座に悪ケミが答える。
「したぼくがもってたはず」
「そうですか」
淫徒プリは激しく咳き込む♀商人を背負おうとした。
「追います」
毒薬を飲まされたのだとすれば助かる可能性は低いが、見捨てるわけにも行かない。
それを悪ケミが呼び止める。
「これに乗っけて」
悪ケミはひっくり返った♀商人のカートを起こし、しっかり握った。
「おんぶするより早いと思う」
「お願いします」
ひとつ頷き、淫徒プリは少女の体をカートに押し上げた。


「いったいどうして…」
今回に限り本当に心当たりがない♀ケミは狼狽する。
だが彼女に向けられる視線は厳しかった。
「まだしらを切るっ!?毒入れれたのはキミしか居ないだろっ」
♀マジはその手を♀ケミへ向けまっすぐ伸ばす。
疑っていたのに防ぎきれなかったという後悔が頭に血をのぼらせている。
「ま、待ってください。毒なんて」
「だまれ」
♀マジはファイアーボルトの詠唱をはじめた。
その表情に本気を感じて♀ケミは身を翻す。
ヒュドドドドドドンッ
木の後ろへ隠れるのに一拍遅れて炎の弾丸が着弾した。
細めの木では止めきれず、2発ほど肩先をかすめる。手加減はまったく感じられない。
「やめてくださいっ」
呼びかけながら鞄をさぐり、彼女はクロスボウを取り出した。
濡れ衣で命を落とすなんて馬鹿らしすぎる。
一戦して逃げるか。あの2人ならうまくすれば殺せるかも。
クロスボウを構えて様子をうかがうと、♀アコが♀マジの背をつついていた。
「あの人何かやったの?」
いささかのん気な質問が聞こえる。事態の急変についてこれてないらしい。
♀ケミは思わず少し期待した。なんとか♀マジを止めてくれないだろうか。
撃つのはやめて声を掛けようとする。
「私はなにも――」
「♀商人のお菓子に毒仕込んだんだよっ。あれ見て、ボク達に矢を撃ったのもきっとアイツ!」
説得しようとした言葉は♀マジの早口にさえぎられた。
しかも後半は事実なので思わず詰まる。
その間に♀アコは説明を要約した。
「つまり悪者ってことね」
「そう。わかった?」
「わかった」
♀アコはうなずき、そして♀ケミへ向けてびしりと指を突きつけた。
「正々堂々と勝負しなさいこの卑怯者っ」


「ちょっ…まっ…」
ガタガタとゆれるカートの上で♀商人は細い声を絞り出した。
「動かないでよっバランス悪いんだから」
カートを引く悪ケミが文句を言い、後ろで支える淫徒プリも彼女を寝かそうとする。
「じっとして、少しでも毒の回りを抑えてください」
「ちが…」
ひどい揺れで吐き気が止まらない。
胃にほとんど何も入ってない状態で無理矢理吐かされたために喉も痛い。
それでも♀商人は淫徒プリの手を押し切って体を起こした。
「うわ、ちょっとっ」
その動きで一気にバランスが崩れ、カートがかしぐ。
なんとか支えようとする2人の努力もむなしく、カートはそのまま横転して♀商人の体が投げ出された。
「♀商人さんっ」
淫徒プリは慌てて彼女の元に駆け寄る。
「大丈夫ですか」
「ごめんなさい…」
あちこちに擦り傷を作り、少女は泣いていた。
「謝んなくていいから。早く乗りなさいよ」
「揺れるかもしれませんけど我慢してくださいね」
悪ケミと淫徒プリはもう一度彼女をカートへ乗せようとする。
その優しい声に♀商人の嗚咽が深くなった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんさい…」
首を左右に振って謝罪を続ける。
「それはもういいですから」
「ちがうの」
なだめる淫徒プリの言葉にさらに強く首を振る。
悪ケミはだだっこを叱るように腰へ両手を当てて言った。
「今はいいとか悪いとか――」
「毒じゃないの」
「……え?」
小さな声だったので聞き間違いかと2人は顔を見合わせる。
だが♀商人は続けてはっきりした声で言った。
「みんなをびっくりさせようと思っておなかが痛いふりしただけなの。毒なんて入ってなかったのっ」
淫徒プリと悪ケミの顔から一瞬表情が消えた。
それが理解と同時に驚愕の表情に変わる。
「あんた、どうして」
「あの人♂セージさんに色目使ってたし、みんな怪しんでたから…」
「ドッキリはすぐネタばらさないとシャレにならないのよっ」
悪ケミが思わず声を高くすると♀商人はぽろぽろ涙を流した。
「言おうと、思ったけど、苦しくて…」
「…そうでしたね」
有無を言わせず処置した淫徒プリは唇をかんだ。
胃の内容物がない状態での嘔吐は胃が痙攣するため非常に苦しい。
しかも飲ませた水か逆流した胃液が気管に入ったらしく、ついさっきまで激しく咳き込んでいた。
しゃべれという方が無理だ。
そこまで考えて淫徒プリは首を振った。
「彼女を責めても仕方ありません。それより急いで戻らないと」
「そうね。罪をにくんでイタズラにくまずって言うし。…あんた、自分で歩けるわよね」
悪ケミの確認に♀商人はこっくりとうなずく。
それを見て淫徒プリは即座に歩き出した。
「急ぎましょう」
来た道を戻る足取りはすぐに小走りになる。
残された♀商人はしばらくぐすぐすと鼻を鳴らしていたが、やがて残されたカートを握った。
そして来た方角と向かっていた方角を見比べ…、トボトボと歩き出した。

155 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/20(木) 09:03:55 ID:9B2KGO5g
♀アコに非難された♀ケミは顔をしかめる。
(冗談じゃない)
卑怯者呼ばわりは別にかまわない。だが非力な彼女が真っ向勝負なんてありえないし、ましてや今度のことは完全な濡れ衣だ。
「2人がかりは卑怯じゃないんですか」
思わず言い返してしまった。
「どの口が言うっ」
案の定逆上した声と地を蹴る音が聞こえ、盾にした木がズドンと鳴る。
「きゃっ」
♀アコの掌打で揺さぶられた木に♀ケミは弾き飛ばされ、地面に転がった。
すかさず幹を回り込んできた少女へ倒れたままクロスボウを向けて牽制。
だが距離が近すぎて発射前に先端を蹴り払われた。矢は見当違いの方向へ飛ぶ。
「こないでっ」
♀ケミには実戦経験が圧倒的に足りない。
とっさにグラディウスを抜くことも思いつかず、次の矢を探しながらクロスボウを振り回した。もちろん♀アコはやすやすと避ける。
がつ、と肩口を蹴り飛ばされてまた地に這う。
そうやって♀アコが動きを封じている間に♀マジの詠唱が進んでいた。
小さな赤い魔法陣が彼女を捉える。
「やめて!助けて!」
パニックに襲われた♀ケミは演技ではない悲鳴を上げた。
その声は怒れる少女達には届かず、だが別の男に届く。
「ちょ、なに?うわっ」
「ながま……助ける」
突然背後から腰に組み付かれて♀マジは狼狽の声を上げた。
急いで振り払おうとするが、凄まじいまでの力で強引に引きずり倒される。
体格、腕力の差が大きすぎてまるで勝負にならない。
うつぶせに頭を押さえつけられ、背中に体重を掛けられた。息がまともにできない。
(――しまった、♂スパノビ!?)
必死にあがく彼女は相手の正体に気付いた。


「どうしたの!」
いきなり声を上げて詠唱を中断した♀マジに気を取られ、♀アコはつい振り返る。
その瞬間、♀ケミが必死の反撃に出た。
「痛っ」
何かを脚に突き刺されて♀アコは跳び退る。
そのときにはもう♀ケミは転げるように逃げ出していた。
「逃がさ…あれっ?」
すかさず追おうとした♀アコの視界がかすむ。
刺された傷はそれほど深くないのに。
不思議に思って見下ろすと腿に矢が刺さっていた。
矢尻へ結び付けられた変色した布に見覚えがある。
「って、これも毒!?もー絶対許さないんだからっ」
刺さった毒矢を急いで抜き、傷口を絞って♀ケミの背をにらんだ。
よほど慌てているのかあちらも足がもつれている。まだ追いつけない距離ではない。
だが♀マジもピンチらしい。
彼女はどっちを優先するか一瞬だけ考えた。


そして、騒ぎにもう1人の男が目を覚ました。
「う…」
もともとの強面にさらに傷が増え、凄みの増した男はうっすらと目を開く。
空が狭い。密度の濃い茂みの中に寝かされているらしい。
彼はゆっくり全身の調子を確かめ始めた。
(どう…やら生きてやがるか。案外死なねえもんだ)
自分が死んだことにされ、墓まで作られているとは夢にも思わない。
と言っても彼が死んだと思っているのは♀ケミだけである。
♀ケミの本心を確かめるためと、さらには身動きの取れない彼の安全のため、♂セージがそういう嘘を提案したのだ。
とはいえその結果、手厚い看護を受けたとは言いがたい状態になったのは間違いない。
傷口はふさいであるようだが、かなりあちこちが痛む。
しばらくは動くのもやっとだろう。
(それでも寝てるわけにゃいきそうにねえな)
にやりと笑い、♂プリーストは動き出した。


<♂プリースト>
現在地:E-6
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 食料二食 マイトスタッフ
外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔
備考:殴りプリ
状態:HPSP共にレッドゾーン

<♀アルケミスト>
現在地:E-6
所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) クロスボウ 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食
外 見:絶世の美女
性 格:策略家
備 考:製薬型 悪女 毒疑惑により♀マジ達から逃走
状 態:脇腹に貫通創(治療済) 寄生虫ロシアンルーレット状態

<♂スパノビ>
現在地:E-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 食料二食
スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒
外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い
備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている 仲間を襲う奴を止める
状 態:HPレッドゾーン脱出?

<悪ケミ>
現在地:E-6
所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 馬牌×1 食料二食
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
備 考:サバイバル・危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<♀アコライト&子犬>
現在地:E-6
容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい 食料二食
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミをやっつける ♀マジも助けたい
状 態:多少の傷 SPほぼ枯渇 寄生虫ロシアンルーレット状態 毒状態

<♀マジ>
現在位置:E-6
所持品:真理の目隠し とんがり帽子 食料二食
容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート)
備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。
   首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミに敵意 ♂スパノビに押さえられている
状 態:足に軽い捻挫、普通に歩くのは問題無し 寄生虫ロシアンルーレット状態

<♀商人>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
    悪ケミ・淫徒プリと同行 嘘が大騒ぎになり自己嫌悪中

<淫徒プリ>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱 食料二食
容 姿:女性プリーストの姿(csf:4h0l0b2) 美人
備 考:策略家。Int>Dexの支援型 ♀WIZに話したことで少し楽になる
    ♀商人・悪ケミと同行 ♀ケミを信じるべきか?
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態 SPほぼ枯渇


<残り15名>

156 名前:名無したん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/20(木) 16:50:21 ID:j6.cI532
この現状で♀商人の行動は突拍子なさ杉なんじゃ

157 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/20(木) 20:17:11 ID:Iv6iWvyQ
そこの辻褄合わせもリレーなのでは?
何にせよ、ちょっと活気が出てきたみたいで嬉しい限り
書き手の皆様GJでござます

158 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/29(土) 00:54:34 ID:z7fJi5.U
277. 失われた剣(三日目午前)


(この通路、どこまで通じているのかしら)
慎重に奥へと進みつつ♀Wizは首をかしげる。
GMが現れたということは、やはり彼らの本拠地まで通じているのか。
確かに今朝の放送で本拠があると言っていたE-5までそれほど遠くはない。
だけど。
(そうするとこんな物があった理由がわからないんですよね)
右手の杖を一回転させる。
隠れ家の入り口に侵入者のための武器を置いておく馬鹿は居ない。
腐乱死体を放置したりもしない。
不衛生だし、誰だってそんな悪臭のする物を近くに置きたくはないだろう。
かといって参加者を近づけないための細工にしては死体が白い衣装を着ていたのがおか

しい。
GMの死体と見れば調べたくなるのが当然だ。実際彼女達がそうしたように。
つまり、ここは本拠ではない。
(じゃあ、誰がなんのために?)
元の島民が残したと考えるのはあまりにも馬鹿馬鹿しい。
冒険者には資材やモンスターを持ち込む手段がない。
やはりGMか、あるいはBR賭博のイカサマに加担する兵士の仕業か。
(そういえば)
そこで彼女はさっき倒した男を思い出した。
(GMもジョーカー1人ではないのですね)
ということはイカサマに関わってる者がGMの可能性もあるのか。
ありそうな話だ。装備を持ち込んだり邪魔な参加者を抹殺したりするのも兵士より容易

だろう。
そういったGMがこの地下道を作って何か画策し、利害の対立する誰かと争ったのではな

いか。
(さっき倒した男もたぶんそうなのでしょうね)
当たり前のようにそう考える。
その瞬間、何かが引っ掛かった。
何か大事なことを忘れている気がする。
なんだろう。
考えがすぐにまとまらない。冷静なつもりでもまだ動揺しているらしい。
(落ち着きなさい)
彼女は自分に言い聞かせた。
そしてどこに違和感を感じたのか思いだそうとする。
(…さっきのGMもイカサマに関ってると考えたところよね?)
別におかしくはない。合ってる保証もないが。
気のせいかしら。そう思いかけて♀Wizは首を振った。
いや。違う。
問題は内容じゃない。
理由だ。
なぜあの男がイカサマに関与していると感じたか。
(――――!)
思考のベクトルを変えたとたん、雪崩のように推測が進んだ。
彼女と♂シーフは自分達の陥った状況についてはっきり口にしていない。
にもかかわらずあのGMが現れた。
それもいやに素早く。
だからGMはこの場所に関係していると感じたのだ。
だが彼は明らかに♂シーフの異常や♀Wizの力が戻っていることを予想していなかった


つまりこの地下室とそこにある物について知らなかったことになる。
ならば、なぜ彼は来たのか。
♀Wizは地図を引っ張り出した。
相変わらず自分の位置表示は消えている。
これだ。
彼女達はGM側の地図からも消え、その異変を調べるためにあの男が来たのだろう。
当然ジョーカーや他のGMも知っているはず。
(いけない!)
♀Wizは♂シーフとの最後の会話を思い出しながら元来た方向へ走り出した。
派遣したGMが死んだと判断されるまでどれぐらい余裕があるだろう。
それまでにしなければならないことがある。
彼女は戦いのあった場所まで戻るとすぐにひざまずいて何かを始めた。

ほどなくして。
「そこまで。手を上げなさい」
♀Wizは背後からの声に動きを止めた。
両手をゆっくり肩まで上げ、そろそろと振り返る。
「…また新しいGMですか」
そこには白い衣装に身を包み、剣を握った銀縁眼鏡の男が立っていた。
しかも今回は左右背後に弓を構えた兵士を連れている。
兵士に守られて眼鏡の男は言った。
「そのまま。動けば撃ちます」
弓使いを含め複数。悔しいが勝ち目はないに等しい。
♀Wizはあふれ出しそうになる殺気を押さえ、つとめて静かに尋ねた。
「なぜGMがこれほど手出しするのですか?最初の説明と違うでしょう」
「反抗すれば処刑するとも言ったはずです」
眼鏡のGMは鼻で笑い、剣を突きつけた。
「GM森から奪った剣を置きなさい」
「…仕方ありません」
♀Wizは腰の後ろに差していた豪華な剣を鞘ごと抜き、しぶしぶ地面に置く。
GMはそれが間違いなく森の下げていたものであることを確認して一歩壁際に寄り、背後

へ向け顎をしゃくった。
「出口まで下がりなさい」
ジョーカーやさっきのGMに比べると無駄口がない。
質問を禁じたことと言い、これ以上情報を与えたくないということだろうか。
それなら。
「これで島に残るGMは2人だけになってしまいましたね」
すれ違いざま、♀Wizは皮肉っぽく言った。
「なに」
男が鋭く反応する。
「なぜ人数を知ってるんです」
ビンゴ。
彼女は挑発ぎみに笑ってみせた。
「あなたが他のGMではなく、戦力としては劣る兵士を連れてきたのでそう思っただけで

す」
要するにカマを掛けたのだ。
言外にそう告げられてGMはわずかに顔色を変えた。しかしすぐにそっけなく答える。
「関係ありません。ここでは兵士でも同じです」
その答えを聞いて今度は♀Wizが眉根を寄せた。
『ここでは兵士でも同じ』?
確かに弓を使えば兵士でも充分彼女を制圧できる。
だが『ここでは』という一言は、この場所では能力制限が解かれ、しかも彼がその事実

を知っているということを示してないか。
その可能性に思い至りながらも彼女は意味を取り違えてみせた。
「隠れる物もない直線通路だから、ですか」
口を滑らしたにしても不用意すぎる。カマを掛け返してきたのかも知れない。
下手に追求すれば能力制限とGMの力の秘密について知っていると白状することになる。
それは彼女ばかりではなく、♂セージ達へも危険を及ぼすだろう。
今はそんな危険を冒すわけに行かない。
彼女の『勘違い』を聞いて眼鏡の男は肩をすくめ、追い払うように剣を振った。
「外へ出なさい。ここは破壊します」
その宣告に♀Wizは今度こそ顔色を変える。
「♂シーフ君はきちんと埋めてあげたいのですけど」
だが男は彼女の顔を見て薄く笑っただけだった。
「却下。こちらで処理します」
「…ではせめて遺品を」
彼女はGMの顔をにらみつけ、うなるように言う。
GMは少し何かを考える様子を見せ、やがてゆっくりとうなずいた。
「まあいいでしょう。ですが動かないように。私が取ります」
男は剣を下ろし、兵士に♀Wizから目を離さないよう指示して♂シーフの遺体に歩み寄

った。
そして少年の遺体から短剣と鞄を奪う。
だが手首に巻きついた腕輪には触れようともしない。
♀Wizの眼が一瞬光った。やはり、この男は何か知っている。
だが鞄の中をあらためていたGMはその視線に気付いた様子もなく、短剣を鞄に入れ彼女

の足元へ投げよこした。
「それでいいですね」
「……どうも」
♀Wizは敵意と不満を表情に浮かべながらもおとなしく♂シーフの鞄を拾った。
残念ながらここまでらしい。
彼女は竪穴の壁に作りつけられた梯子を登って地上へ出る。
その後を追って地下から呪文の詠唱と崩壊音が連続して響きだした。
ヘブンズドライブで直接地下を破壊しているらしい。
(同じやり方で埋めてあげようかしら)
ちらりと物騒なことを考えて穴をのぞきこむ。
だが兵士たちの弓がしっかり彼女を狙っていた。
ということは魔法を使っているのはあのGMなのだろう。
今はまだ無理に戦うときではない。
その前に誰かに伝えておかなければいけないことがある。
♀Wizは小屋を出た。
♂シーフが森から奪った剣を持ち出すことはできなかったが、GMに関していくつかのこ

とは分かった。
それらはきっと戦うとき役に立つ。
(あ、でも1つ忘れてました)
ふと振り返る。
(今のGM、名前はなんて言うんでしょう)

「ハックション!」
舞い上がる砂埃を吸い込んで橘は派手にくしゃみした。
奥の実験室と腕輪は完膚なきまでに破壊し、地下道の入り口は崩した。
本物の橘の遺体は小屋ごと燃やしてしまおう。
それで制限解除効果も消えるはずだ。
彼が何をしたか立証できるだけの証拠はもはや存在しなくなる。
もちろん断片から推測することはできるだろう。だが物証がなくなり、彼がなぜそんな

ことをしたか分からなくなればそれでいい。
あとはジョーカーに粛清される前に適当なところで姿をくらますだけだ。
任務にかこつけて証拠を隠滅した橘はうっすらと笑った。
しかし証拠を消すことに気を取られるあまり橘はいくつかのことを見落としていた。
GM森はその最期において愛剣を奪われ、予備の剣で戦ったということ。
にもかかわらず黒焦げの遺体はその手に何も握らず、腰の質素な鞘に剣が収まっていた

こと。
そして剣のつかと刀身を固定する目釘が抜け、床に転がっていたこと。
それらは♀Wizの残したある細工を示していた。


<♀WIZ>
現在地:謎の地下室
所持品:クローキングマフラー 未挿sロザリオ
    ウィザードスタッフ DCカタール +7THグラディウス 多目の食料
容 姿:WIZデフォの銀髪
備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 ♂シーフと同行 年の事は聞かないでね?
状 態:容態安定 ただし全身に傷跡が残る HPは半分くらい?
    希望が見えてきて気持ちが前向きになるも♂シーフと死別して不安定に

<GM橘>
現在地:謎の地下室
所持品:剣(バルムン?) GM森の剣
外 見:銀縁眼鏡、インテリ顔
備 考:殴りHiWiz ガンバンテイン ヘブンズドライブ

159 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/09/29(土) 00:56:06 ID:z7fJi5.U
しまった改行で切れたorz

160 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/14(日) 00:40:11 ID:SrbfZZpU
278.BlockBuster[3日目午前]


まばゆいばかりの緑あふれる森の中、毒々しい紫色の触手がうねっていた。
空中をのたうち、あるいは地中を貫いて突き上げ。
2人の騎士を取り囲もうとする。

「マグナムブレイクっ」

♂騎士は四方へ衝撃波を放ち、取り囲む触手の波を吹き払った。
その瞬間に生じた触手の隙間へ飛び込み、大剣を振るう。

切り飛ばせたのはわずかに2本。
傷ついた触手は断面から不気味な粘液を撒き散らしながら素早く引かれる。
だがそれ以外の触手が再び別方向から襲い掛かってきた。

きりがない。
馬防柵と弓兵・槍兵で固められた防御陣を突破しようとするのに似ている。
援護なしでの強攻は無謀と言っていい。一度引く方が賢明だ。

そんなことは分かっている。
だが飲み込まれたハンターに果たしてどれだけの余裕があるのか。
今さら下がる道はない。

「あぶないっ」

警告の声と共に♀騎士の剣が突き出され、彼の死角から迫る触手を切り裂いた。
さらに盾でもいくつかを受け止める。
しかし安心する間もなく2人の足元が不気味に震動した。
とっさに跳び分かれた彼らを真下から飛び出した触手がかすめ、態勢を崩した所へさらに何本かがまとめて襲い掛かった。

♂騎士は身をかがめて頭上にかわし、幅広の剣身を盾にして受ける。
しかしさばききれなかった触手に胴を強く薙ぎ払われた。
からみつかれこそしなかったものの、衝撃で数歩押し戻される。

「くそっ」

怪物の本体までわずか10歩ほど。
走れば数秒しか掛からないその距離が今は果てしなく遠い。

それでも彼は諦めずに押し戻された間合いを詰めた。
大剣を振り回し、取り残された♀騎士に絡みつく触手を叩き切る。
さらに残りを吹き払うため再びマグナムブレイク。

「きゃっ」

余波を浴びてよろめいた♀騎士が小さく声を上げる。
距離が近すぎたようだ。

「すまんっ」

味方を巻き込んだことに気を取られ、踏み込みが遅れる。
その間に吹き払った触手が戻ってきてしまった。
突き上げ振り下ろされるそれらに追われ、2人そろって数歩下がる。
仕掛けなおすタイミングを計りながら彼は♀騎士に改めてもう一度謝罪した。

「悪かった。大丈夫か?」
「…ええ、平気です」

返答までにわずかな間があった。
♂騎士はそれを苦痛の表れと取って表情を固くする。

「怪我させたか。すまん、無理するな。さがっててくれ」
「あ、いえ。そうではなくて」

♀騎士が盾を構えて彼に並ぶ。
そして追ってきた触手を切り払いつつ言った。

「今のでひとつ手を思いつきました」

♂騎士は驚きに眼を見開く。
そして早口に問い返した。

「ハンターの子を助ける手か」
「ええ」
「教えてくれ」

急かすと♀騎士はなぜか少しだけ迷う様子を見せた。
だがすぐに決心した様子で告げる。

「ボウリングバッシュの用意をしてください」
「なんだって?しかし…」

両手剣を得意とする彼は確かにその技を使える。
実際に使ってもみた。
だが軽い上に自在にうねる触手はその場で爆ぜるばかりで、吹き飛んで別の目標に衝突するという効果が発生しない。
それは♀騎士も見ていたはずなのだが。

「議論してる暇はありません。お願いします」
「お、おい!」

一声残し、これまでどちらかといえばサポートに徹していた♀騎士が一直線に突入する。
途端に殺到する触手。
慌てて♂騎士も追うが、タイミングがずれた上に彼女の踏み込みが深すぎてカバーしきれない。
♀騎士の体を触手が打ち据え、あっという間に四肢を絡め取った。

「くうっ」
「今助ける!」

追いついた♂騎士は♀騎士を捕らえた触手へ剣を振るうが、1本断つと2本が、2本を断つと3本が絡み付いてさらに絞り上げる。
それどころか♀騎士の解放に気を取られた彼の体にも触手が伸びた。
それでも触手を断とうとする彼に♀騎士が叫ぶ。

「私にBBを!」
「な…!?」

♀騎士は身動きの取れない体を必死によじり、絶句した彼へ盾を向ける。
それで♂騎士はやっと理解した。
たしかにボウリングバッシュを直撃させれば彼女を怪物のところまで飛ばせるかもしれない。

「しかし――」
「早く!」

決意に満ちた眼の色を見て♂騎士は反論の言葉を飲み込んだ。
彼女は議論している暇はないと言った。
その通りだ。
危険だとか、自分が受けるとか言いたいことは山ほどあるが、そんな暇はない。

なのに♀騎士へ剣を向けることを意識した瞬間から腕が震えだした。
また死なせてしまうかもしれない。
♀アーチャーの命を奪わなければならなかったのとはまた話が違う。
今度は殺してはいけないのだ。

(俺は……また……?)

♀プリと♂アルケミの顔が、消しきれない後悔の念と共に脳裏をよぎる。
だがその瞬間。
トン、と背中を押す力を感じた。

『なにグズグズしてるのよ。助けるんでしょ?さっさとやりなさい』
『大丈夫、俺たちがついてる。死なせやしないさ』

2人に笑われた気がした。

気のせいかもしれない。
触手が当たっただけなのかもしれない。
でも、それで充分だった。
腕に力が戻る。

「歯を食いしばれっ」

♀騎士と自分自身に言い聞かせるように叫んで、剣を思い切り振りかぶった。
体をひねり、それを妨げようとする触手の弾力さえも利用して、
横殴りの豪打を爆発させる。

「おおおおおおおおおおおおおおおっ!」

轟音。
♀騎士を縛る触手が束になって千切れ、すらりとした長身が弾丸となる。
瞬時に空間を横切った肉体は剣の威力そのままに怪物へ激突した。

ミギィイイィィィイィィッ

怪物は衝撃で口から粘液を吐き出し、耳障りな悲鳴を上げて身もだえた。
その動きに振り払われて♀騎士が転げ落ちる。
♂騎士はひやりとする。
手加減はうまく行った感触があった。
だが剣と怪物に連続して激突したのだ。ダメージは軽いはずがない。

「おい、大丈夫かっ」
「え……え。な…ん…とかっ」

それでも♀騎士は体を起こした。
右手の剣を重そうに持ち上げ、突き下ろす。
ず、と鈍い音を立てて怪物の体に切っ先が埋まった。
同時に気合い一声。

「マグナムブレイク!」

突き刺した剣を中心に衝撃波が生まれ、傷口を裂き広げる。
それは怪物の体腔奥まで届いて体液とは別のさらりとした液体を吹き出させた。
辺りに刺激臭が立ち込め、怪物が今度こそ絶叫する。

ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!
「くうっ」

ほとんど超音波のような悲鳴に身をすくませた♀騎士は滅茶苦茶に振り回される触手に跳ね飛ばされた。
同時に♂騎士に巻きついていた触手も暴れだし、投げ出されるように解放される。
彼は急いで♀騎士に駆け寄った。

「よくやった。あとは休んでてくれ」

しかし♀騎士は剣を杖に立ち上がろうともがいた。

「…まだ、やれます」
「無理するな。ここからは俺1人でなんとかなる」

彼は♀騎士を制した。
どう見ても連続でダメージを受けすぎている。これ以上は危ない。
それに消化液が抜けて空気が入った分、飲み込まれたハンターの命にも余裕ができたはずだ。

ただ、1人で何とかなると言ったのは気休めに過ぎない。
怪物は防衛本能なのか、付近のもの全てを跳ね飛ばそうとする勢いで触手を振り回していた。
今までより危険は少ないが、近付くのはさらに難しくなった。
さっきみたいにスキルで強引に接近したとしても攻撃する前に弾き返されるだろう。

何か投げられるものでもないか。
♂騎士は周囲を見回した。

161 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/14(日) 00:40:53 ID:SrbfZZpU
<♀騎士>
現在地:E-6
所持品:S1シールド、錐 、ツルギ
外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳
備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように
状態:JT2発被弾 背に切傷 BBその他でグロッキー気味

<♂モンク>
現在地:E-6
所持品:なし
外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁
備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷 戦闘場所より少し近くで気絶中
状態:腕に裂傷、JTを複数被弾、意識不明、通電によるショック症状

<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:S1少女の日記、カッツバルゲル、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
   できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
   両手剣タイプ
状態:痛覚喪失? 体力は半分以下 精神は安定? 個体認識異常を脱する。
   必要とあらば殺すことを厭わなくなった? 仲間を守りたい

<♀ハンター>
現在地:E-6(寄生虫体内)
所持品:スパナ、古い紫色の箱、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3]
スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング
備 考:対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり
状 態:被捕食中 消化の危険は減少 ♀スパノビと離れ、再び誰も信用できない状態 ただただ恐怖

<ふぁる>
現在地:E-6
所持品:リボンのヘアバンド
スキル:ブリッツビート スチールクロウ
備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇
状 態:JTによる負傷で気絶中

<寄生虫(寄生磯巾着?)>
現在位置:E-6
外 見:大きい紫色のヒドラっぽいもの(ペノメナ?)
備 考:♂ローグから孵り、捕食 両生類?
状 態:♀ハンター捕食中 捕食嚢に達する重傷 狂乱中

162 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/14(日) 02:01:37 ID:89F1YIQ.
なんか久しぶりに見たら地味に話が進んでるなー
書いてる人乙ー

163 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/14(日) 09:19:26 ID:WQlQ9dr6
続きを期待してますー。

164 名前:ドドリア 投稿日:2007/10/15(月) 13:04:42 ID:lY088Ccs
俺様TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEええ
(と意味不明に叫ぶドドリア)

165 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2007/10/18(木) 11:09:39 ID:7lNWf/n6
無名RO小説家とは感激した。(リレーで進んでるのかな・・)
攻城戦だの晒しだのしか見てなかった俺ってバカだな・・。
次回期待してますぜ!!

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