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◆【18歳未満進入禁止】みんなで創る小説Ragnarok ♂萌エロ 第2巻◆

80 名前:Identity(前) 投稿日:2006/08/13(日) 03:19:08 ID:8aMq.ntk
昔のことなど覚えていない。


ただ数日前訪れた冒険者達が、女好きのアサシンの話をしていた。
借金を抱えて姿をくらました彼を、アサシンギルドの者が探しているらしかった。

「でさ、そいつの名前は――」

聖職者が続けた言葉の先を、エレメスは聞き取れなかった。愛刀[カタール]を取り落とす。酷い頭痛がして、喉の奥にきつい酸の塊がせり上がってくる。辛うじて飲み込んで、胸元を押さえた。
息があがる。苦しい。クローキングを維持するため意識を集中しようとしても、頭が混乱して、訳の分からない衝動に支配される。
耐えられなくなって床に膝を着いた。ぐ、と息を詰めて、震える手でカタールを握りなおす。
(駄目だ、集中しろ…暗殺者たる者常に冷静でなけれ、ば……)

(…あれ、エレメスだよな)
様子がおかしい。カタールを取り落としたのを見咎めて、ハワードは立ち止まった。
途端体が揺らいだのを見て、階段を飛び降りる。
「エレメスっ!」

呼ばれた気がして、振り向こうとして、眩暈がして俯いた。
視界の上半分が墨を流したようになっている。
「……!…」
声が聞こえる。すぐ傍に居る筈なのに、気配は遠のいて、何を言っているのか聞き取れない。

(もう随分前から行方が分からないらしい。放浪好きだったそうだから、いつかふらっと帰ってくるかもって言ってたっけ)
(女好きで有名だったんだよな。結構顔が良かったからモテたんだとか)
(でさ、そいつの名前は――)

彼らの会話が痛む頭に響く。
何がなんだか分からなくなって、エレメスは硬く目を閉じた。

――拙者は一体……誰…?

答えの出ない疑問が思考を埋め尽くす。どうしようもなく不安になって、鼻の奥がツンと痛くなる。

と、誰かが肩を掴んだ。強引に体を起こされて、大丈夫か、と問われた。この声はハワードだ。
答えようと思ったけれど、言葉を口にする前に突然抱き上げられた。
そこそこ重いつもりだった自分を軽々と横抱きにするあたり、意外に腕力はあるらしい。
触れ合う部分から布越しに伝わる体温に妙な安堵を覚えて、無意識に彼へ寄りかかる。相手はあのハワードなのだが、今はそんな事を気に掛けられる精神的余裕はなかった。
――自分が誰で、此処が何処で、何故、何のためにこの牢獄に閉じ込められなければならないのか。
答えが知りたくて、でも知ってしまうのが怖くて、少しでも気を抜けば涙が出てきそうだった。

エレメスの様子がおかしい。いや、おかしいなんてもんじゃない。マーガレッタに診せないと、と思ったが、それも違う気がする。
取り敢えず下がらせよう、と思って、歩けそうに思えないので抱き上げる。思ったより軽いな、と呟いて、あとは控え室へ走った。

彼の部屋は殺風景極まりなかった。きっと落ち着くには不向きだろうと考えて、自分の部屋に連れて行くことにした。
ソファに座らせて、体を起こそうとする、と、軽い抵抗を感じる。エレメスが腕を掴んでいた。
「…?エレメス」
力が抜けたように俯いていた彼が、顔を上げた。何か、縋るものを求めているような、頼りない瞳がハワードを見上げる。
「……ッ」
怯んだ。けれど同時に、酷く興奮した。欲に突き動かされて、エレメスを押し倒す。
「ハワー、ド…」
「……すまない、もう…だめだ」

どうにかなりそうだった。
不安に押し潰されそうだった。
何か、一時でもいい、支えてくれるものが必要だった。
今、傍に居るのは、ハワード。いけない、と思った。彼に縋ってはいけない、と。
でも、体は言うことを聞かない。自分をソファに下ろして立ち上がろうとする彼の腕を掴む。
そのことに自分で驚いて我に返ったが、それでも残る不安に、やはりヒトの温もりを求めてしまう。
――ああ、でも良かったのだ。セイレンやカトリーヌは傍に居てくれるだろうけど、今はそれだけでは足りない。セシルなら間違いなく放り投げられそうだ。マーガレッタは後のことが怖い。
ただ自分に覆い被さるハワードの背中に、そっと腕を回した。


*   *   *

はじめまして、お邪魔致します。
早速でなんですが某生体スレのハワード×エレメスです。
途切れ途切れで書いてたので変なところもありますが気にしたら負けだっorz

えろすは途中ですよ!ちょっと休憩してからまた続きを書こうと思います。
エレメス萌え同志が近所にいなくて自己補完MAX(´・ω・`)

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