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【アラームたん】時計塔物語 in萌え板【12歳】

[344:名無しさん(*´Д`)ハァハァ(2010/05/09(日) 14:38:59 ID:yfobIjRQ)]
り・・・リニュまでには終わりた・・・。

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「・・・だれ・・・だ・・・」

錬金術師は、声のする方へ顔を向けた。
倒れ伏した床から見上げた映るコンソール。
その上を切り裂くように何本もの稲光が走っていた。
稲光は、明滅を繰り返しながら収束し、みるみるうちに光球へと変わった。

「これ・・・は・・・・」

錬金術師が重い体を引きずり光球へと近づくと、その光球から小さな手が現れた。
それは空を掴むように手を伸ばし、それに続く体が徐々に現れた。

その不思議な光景を呆然と見つめる。
その影が、錬金術師をゆっくりと覆っていった。


“―――h はええええええぃっ”
――その刹那。声が響いて突風のように駆け抜けていった。

序々広がる影は、その声とともに突然、錬金術師を包みこむように大きくなると、
光球から現れたその影――小さな体が、錬金術師に勢い良く降りかかった。

「―――んっっ―――くっ」

突然強襲に錬金術師が声も上げられず、くぐもる息遣いのみを吐き出す。
錬金術師はその体にの降りかかった塊を受け止めて床へ転がった。

反射的にその塊を手でどかす。
錬金術師のその手には人肌の温度と小さな質量の名残があった。
どかされたその塊、その場で体をまるめ、もそもそと動いていた。

「・・・ん・・・ハぁ・・」

その塊から産声のような弱く小さい息吹があった。
錬金術師はゆっくりとその小さな塊を見ると、それは幼い少女の姿だった。

「―――おのれ、、、まだ我を拘束し、阻むというのか―――」

先程の冷淡にして幼い声に気づき、錬金術師が顔を上げてコンソールをみると、
そこには同じ姿をした少女がもう一人、訝しげに佇んでいた。

その少女が自分手や腕、体を見やり、肩をぐるりと回すと、そうつぶやいた。

「―くそっ・・・切り離せたというに、この姿は・・・・。
なんぞ・・・・?? まるで・・・力がでない・・・???」

錬金術師を無視するように、コンソール上の少女が訝しげな声でつぶやいていた。

「誰・・・だ・・おまえは・・・」

口を開くのも重かった。
寝入りよりも重重と感じる体をおして、その疑問が錬金術師の口をついて出た。

「――――――私・・・か?」

コンソール上から、床に倒れ伏す錬金術師を見下すように少女が言う。
その瞳には、その姿とはまるで似つかわしくない冷淡な光を宿していた。

「―私は・・・っくくっ・・・お前らが『封印した』と思っているモノさ―」

嘲笑を含んだ言葉が響き、錬金術師が目を細める。

その言葉の真偽は心が感じる違和感が本当だと唱えていた。
細かな立証を脇においてなお、今まで感じていた違和感のパズルが少しずつはまりだす。その少女の声には、その少女の言葉には、そんな強制をもった呪詛の力があった。

「もっともこの姿は、我を阻もうとした、そこに転がる少女のものだがな・・」

言葉はその子供子供した声色とは真逆に、深い闇を宿す重厚な韻で響く。

「お前は―・・・超兵器・・・の意思・・・だとでもいうのか・・・・」

錬金術師が臓物を吐き出すように言葉を紡いだ。
その目は見上げるようにコンソールの上に立つ少女を見上げ、見定めるように強く光る。
「くくく・・お前だけは気付いていたようだな・・・だが・・もう遅い・・・」

少女は腰に手を当て、コンソールに腰掛けて足組む。
嘲笑とともに続く言葉は、まるで床の錬金術師へ、侮蔑のように下された。

「私は私の体という殻を脱ぎ捨て、私をも凌ごうとするこの塔と同化した。
すでに私の意思は、私を抑えようとした力を辿り、この塔へと降臨した。」

(そんなことが・・・)

出来るのか?という疑問は渦巻いていたが、現状という事実がそれを飲み込んだ。
看過した凶兆を読みきれなかった、その後悔だけが錬金術師の心に染み広がる。

「お前も感じただろう、この塔の力の膨張を。
私は私をも阻もうとしたこの塔の力を飲み込み、それと入り交じりて、
我が魔力は、血流のごとくこの塔を駆け巡り、その隅々までを掌握した。

駆け巡る魔力は私の血となり、
鼓動するあまたの機関は私を構成する体となり、
この塔の力は私がふるう手足となり・・・。

―そしてこの塔は新たな私となり、再び私は世界の滅びへと歩み始める。
―そのはず、だった・・・のだがな・・・。」

若干悔しそうに、少女はその脇に転がる同じ姿をした少女の見遣る。

「私を阻む、最後の枷(リミッター)すら、そこに転がっているのにな―。
まだ、私を阻むか。この世界を壊すなと囁き、この心を迷わすか。―忌々しい。」

もうひとりの少女、枷と呼ばれた少女が床に転がっていた。
吐息のような呼吸にわずかに胸を上下させて、静かに眠っていた。

錬金術師はその姿を過去の記憶とたぶらせて、
遠ざかる意識の中で薄ぼんやりとした過去の記憶を見ていた。

噂に聞く、
超兵器の制作も終盤、
起動寸前まで完成しなかったという『精神』という自律制御機構―。

持て余す力の飲まれ、理論上コントロール不能なまで、膨れ上がった破壊衝動。
それを抑えるために『精神』に組み込まれたリミッター。

対話不能だった超兵器の『精神』と対話し、稼働安定領域までに引き上げた秘匿機構。
そして、その秘匿機構に組み込んだとされるひとりの少女の噂。

どこぞの人体研究の派生で生み出された子(結果)だとも―。

端々の噂を頼りに整合し、繋ぎあわせた超兵器の情報。
それらが漣のように、錬金術師の脳裏に浮かんでは消えた。

薄く白んだ辺りの景色に、眠る小さな少女の姿があった。
その少女こそ、―まさか―であったのかもしれない。

「―――まぁ、いい。」
スフィアに写された塔内を見ながら、少女が軽く微笑んでいた。

「私が滅んだとでも思っているなら好都合だ。
ゆっくりと私はこの塔に潜み、本来の力を取り戻すとしよう―。」

その姿はまるでその惨状を楽しむようだった。

<つづく>


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