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【あしゅら】♀モンク萌えスレ Restoration【はおーけん】

93 名前:85 投稿日:2004/02/24(火) 00:50 ID:1Yd0wtQ6
 敬礼ッ!
 自分はしがない修行僧でありますッ!
 学生帽に草の葉銜え、弱きを助け強きを挫く、そんな漢になりたいでありますッ!

「御前、女だろうが」
「言わないで下さい……」
 同じく修行僧の形をした先達からの容赦ない指摘に、たった今試練を乗り越えたばかりの女修行僧は
涙ながらに崩折れる。その身に纏った白と黒を基調とした法衣には、一点の染みも見つからぬ。
「ほれ、気が済んだら返せ」
「はい……」
 差し出す武骨な手に転職祝に借りた品々を返すと、娘は馴染みの看護帽を栗毛の頭に被り直した。
その様を眺めていた、娘よりやや年嵩と思しき男の修行僧は、珍しく温和な調子で言ってのけた。
「御前にはその方が似合ってるよ」
「そ、そうでしょうか」
 滅多に聞けぬ言葉に思わず紅に染まりかける頬を他所に、何気なさを装い、先達は呟いた。
「御前の御守も今日で終わりだな」
「え!?」
「俺は阿修羅覇凰拳を会得しに行く」
「じゃあ、私も」
 霹靂に驚き咄嗟に出た言を止めるかのように、服事の時分の幼さを僅かに残す娘の蒼白なる面の前に
掌をかざし、先達は問う。
「俺の頭上に、何がある」
「雲です」
「こーこーだッ」
「が、学生帽ですッ」
 戯けた返答に牙剥き己の頭上を指差す先達に圧され、その身を強張らせた娘は震え声で答えた。
 漸く得られた正答に先達は無言で頷くと、精悍な面を引き締め再び問う。
「御前の頭上に、何がある」
「……看護帽です」
「俺が何を言いたいか、分かるな」
「趣味に走るのは程々に!」
 ごちん、火花が散った。
「痛いですよう」
 頭を駆けた雷に慄き双眸にうっすら涙を浮かべ呟く娘を突き放すかの如く、先達はその背を向け、
告げた。
「俺は拳を、御前は両刀を選んだ。道は別れたんだ」
 娘の瞳から露が退いた、
「じゃあな、生きてりゃまた会うかもな」
「会いませんッ」
 ひらひらと片手を振り修道院を立ち去ろうと足を踏み出した先達の背に、娘は叫んだ。
「あなたに追い付くまでは、会いませんッ」
 肩越しに振り返れば、以後振るうであろう己の得物たる拳を固く握り締め、娘は黒の瞳で先達を
見据えていた。
「言ったな」
 笑んだ。
「俺も、そう願う」
 その言葉が、最後だった。肩を震わせ歯を食い縛り、先達を見送ることなく、娘は天にそびえる聖堂を
涙を溜めた眼で食い入るように見詰めていた。砂利を蹴る音だけが耳に届く。

 己の前に、今や背はない。けれど、何時かは。

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