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【あしゅら】♀モンク萌えスレ Restoration【はおーけん】

86 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2004/02/19(木) 16:18 ID:tOr5sghA
「滅せよ!猛竜拳ッ!」
「ぐおおおぉぉぉっ!」
 実践で使うのは、初めてだった。
 気を纏った鉄拳が魔物を打ち砕いた瞬間、彼女は己の力に今更ながら驚いた。
服事の時分、精錬した鎖を振るって地道に一打一打を加えていたのが嘘のようだった。
 輪郭を失い無へと消え行く魔物を背に、衝撃でずり落ちかけた看護帽を被り直し、
彼女は思う。

(……欲しいな、学生帽)

 彼女には、先達が居た。頭に学生帽を被り、口に草の葉を銜えたかの修行僧の出で立ちは、
かつて異国にて一世を風靡した、俗に言う「蛮カラ」を思わせた。
 口調こそ荒いものの、鋼の身より繰り出す魔への拳と、深い情より発する人への癒が
共に存するかの先達の姿を、彼女は夢見た。しかし。

「俺は見ず知らずの連中まで癒す気はない。手前の尻は手前で拭くんだな」
「そんな!見捨てることなんて出来ません!」
「馬鹿野郎!半端な情は人を堕落させるだけだッ!慈善なんて代物は、プリーストに
任せておけばいいッ!」
「そんなことはありません!モンクだって、人の役に立てる筈ですッ」
「ったく、これだから餓鬼は」

 一歩も退かぬ、服事になったばかりの己に、溜息一つ吐いた先達が寄越したのは、
白地に赤の十字が入った、真新しい看護帽だった。

「だったら、証を立ててみせろ」

 彼女が修行僧となりて直ぐに、先達は阿修羅覇凰拳を会得する、とだけ言い残して、
疾風の如く去ってしまった。
 一目逢いたい、せめて同じ帽子を得ることで先達を近くに感じたい、けれど。

「うわあああ!」
「此奴等、多すぎるッ!」

 近に木霊す冒険者の鳴に、咄嗟に彼女は身を起こし、考える間もなく駆け出した。
 約を果たすこと叶わぬまま、先達の前におめおめと面を晒せるものか。

「ヒール!」

 瞬間、鉤爪の猛攻にあわや倒れんとす盗賊と暗殺者の身を、白光が包んだ。

「ありがとよ!」
「済まんッ」

 正直、先の戦にて若干疲弊していた彼女にとって、現在の戦況はやや危ぶまれる
ものだった、それでも、

(見ていて下さい、先輩)

 更に襲い来る魔物の注意を引き拳を振るう一方、不運な冒険者を癒しながら、
彼女は己が意を金剛と変えた。その強き瞳の上には、先達からの賜り物が
異なる道行く新参への深き情を以って座していたのだった。

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